エラベノベル堂

生贄女王

18+ NSFW

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4章 / 全10

澪に導かれるまま、美咲は屋敷の奥へと進んでいった。広間に残された男女の視線が背中に突き刺さる。彼らの内側から立ち上る欲望の匂いが、廊下の空気にまで染み込んでいる気がした。 「こちらです」 辿り着いたのは、重厚な オーク材の扉の向こうにある書斎のような部屋だった。壁一面を埋め尽くす古書、蝋燭の揺らめき、そして中央に鎮座する読み台。その上には、黒革の表紙に金文字で装飾された一冊の書物が置かれていた。 「王家の予言書。我々が代々守り続けてきた聖典です」 澪が恭しくページをめくる。そこに描かれていたのは、黒いドレスを纏った女性の挿絵だった。顔は白紙になっているが、その立ち姿には不思議な既視感がある。 「読み上げましょう。『暁の娘、現世に降り立つ。彼女は穢れを知らぬ聖処女にして、全ての感覚を受け入れる器。その身を捧げる時、世界は新たな悦びへと目覚めん』」 美咲は首を振った。 「……私には関係ない。帰らせて」 「帰れますか? あなたの内側が、ここに留まることを渇望しているのに」 澪の指先が美咲の頤を持ち上げる。その瞳には底なしの闇が広がっていた。 「感じているはずだ。この屋敷を満たす空気、男たちがあなたに向ける欲望、それらが肌の隙間から入り込み、体の奥を熱くしていることを」 美咲は息を呑む。否定したかった。けれど澪の言う通りだった。胸の奥がざわめいている。恐怖だと信じ込みたかったその感覚は、紛れもない期待と興奮だった。 「儀式のために用意された衣装があります」 澪が手鏡を差し出す。そこには黒いゴスロリ衣装のイメージが映し出されていた。フリルとレースで飾られた深淵のような漆黒のドレス。 「着てください。聖処女として、我々を導くために」 美咲の唇が震える。 「嫌よ……こんなの」 「嫌? 本当に?」 澪が耳元で囁く。その声は直接脳髄に響いてくるようだった。 『お姉ちゃん。私の気持ち、届いている?』 柚葉の声が幻聴のように蘇る。美咲の抵抗が音を立てて崩れていく。 「……わかった」 美咲は震える指先でブラウスのボタンにかけた。澪の視線、そして壁の向こうから覗く複数の欲望が、彼女の肌を焼きつける。黒いレースとサテンの衣装が、いつしか美咲の体を包み込んでいた。 「美しい。予言書の挿絵そのものだ」 澪が満足げに頷く。鏡の中の美咲は、確かに聖処女と呼ぶにふさわしい姿になっていた。だがその瞳の奥には、言葉にできない暗い情炎が揺らめいていた。

4章 / 全10

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