エラベノベル堂

不幸を愛に変える

18+ NSFW

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3章 / 全10

莉月を帰したあと、俺は一人で日記を開いていた。彼女の必死な態度が気になったが、それ以上にこの日記が放つ奇妙な引力に抗えなかった。ページをめくると、褪せた文字で住所が記されている。市街地から離れた、今は使われていない旧校舎。 「ここに来て」 という文言とともに、詳細な地図まで描かれていた。どうしてこんなものが大学の棚にあったのか。疑問は尽きない。だが、俺の不幸体質は時としてこういう不可解な現象を引き寄せる。夜風が頬を撫でるなか、俺はバスに揺られて目的地へと向かった。廃校の正門前に立ったのは、二十二時を回った頃だった。錆びた鉄柵が月光を反射して、異界への入り口のように見える。 「こんな時間に、何をやってるんだ俺は」 自嘲気味に呟いて一歩踏み出した瞬間、校舎の入り口から人影が現れた。 「あ、来た来た! お兄さんだよね?」 甲高い、鈴を転がしたような声。目を凝らすと、そこには二人の少女が立っていた。セーラー服を着ているが、どこの学校のものかはわからない。どちらも小柄で、大きな瞳が好奇心に満ちて俺を見上げている。 「呼んだら来てくれた。偉い偉い」 もう一人の少女がパチパチと手を叩く。その無邪気さに、逆に警戒心が解けていくのを感じた。 「君たちは、この日記の?」 俺がポケットから黒革の日記を取り出すと、少女たちは顔を見合わせてクスクスと笑った。 「そうそう、あれのおかげで会えたね。お兄さん、感度良さそうだし、私たちと遊ばない?」 「感度……?」 言葉の意味がわからず首を傾げると、最初の少女が俺の手首を掴んだ。 「いいからいいから。教室で面白いこと教えてあげる」 温かい掌に引かれるまま、俺は薄暗い廊下を歩き出した。古い木造校舎の床は軋むが、少女たちの足取りは軽い。 「感度を高める遊び、知ってる?」 「知らないな」 「えー、もったいない。お兄さんの場合、きっと十倍くらいになっちゃうよ」 十倍、という言葉が鼓膜に残る。彼女たちは何も答えを待たず、教室の引き戸を開け放った。 「さあ、入って」 月光が差し込む教室の中央に、古びた机が一台だけ置かれていた。俺は背中を押されるようにして、その部屋へと足を踏み入れた。

3章 / 全10

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