数日後の未明、玲奈は独房の冷たい空気の中で目を開いた。蝋燭の炎が揺らめき、壁に怪しげな影を落としている。手首と足首の拘束具は変わらず彼女の自由を奪っているように見えたが、その心はもはや囚人ではなかった。 「母さん……」 幼い頃の記憶が蘇る。夜な夜な怪しい呪文を唱えていた母の姿。そして彼女が耳元で囁いた言葉。 「私たちの血は特別よ。欲望を糧にして、魔力に変えることができる」 玲奈は静かに目を閉じ、意識を集中させた。母から受け継いだ魔術の片鱗——それを行使するときが来た。手首の拘束具の鍵穴に、想像上の指を伸ばす。体内の魔力を指先に集め、内側から鍵を操る。 「カチッ」 小さな音が響く。玲奈はゆっくりと手首を動かした。拘束具が緩み、自由になる。足首も同じだ。彼女は拘束具を完全に外し、そのまま置いた。 しかし、彼女は逃げない。あえて拘束具を緩めたまま再び手首を通し、囚われの身を装う。 「夜明け前……もうすぐね」 最後の仕掛け——雅樹が主催するというパーティー。そこで、彼女は溜め込んだ魔力を爆発させる。その時を待つのだ。 玲奈は暗闇の中で静かに笑った。もはや彼女は被害者ではない。復讐の炎を胸に、女王として君臨する準備を整えていた。拘束具はただの道具に過ぎない。自由はすでに、彼女の手の中にある。
奪われし記憶、魔女の刻
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