「おい、ボスが到着したぞ」 地下室の入り口から新たな声が響く。重厚な扉が開き、鋭い眼光の男が姿を現した。黒いスーツに身を包み、全体から威圧感が滲み出ている。 「これが例の覚醒体か」 ボスと呼ばれた男は蓮の前に立ち、値踏みするように見下ろした。 「たしかに……普通の匂いじゃねえ。組織を拡大するにはうってつけだ」 ボスが蓮の顎に手をかけ、無理やり顔を上向かせる。 「お前のその体質、俺たちの商売に利用させてもらう。催眠術で完全に操れば、金はいくらでも転がり込む」 「……断る」 蓮は弱々しいながらも拒絶の意を示した。 「選択肢はないぞ。お前はもう、俺たちの道具だ」 ボスが指を鳴らす。その瞬間、蓮の視界が歪み始めた。 「くっ……」 頭の中に霧が立ち込める。意識の輪郭が曖昧になっていく。 「眠れ。そして従うんだ」 強烈な催眠術が蓮の精神を押し潰そうとする。抗おうとする意識が、泥沼に沈むように弱まっていく。 その時だった。 「蓮くん……!」 彩奈の鋭い声が地下室に響き渡った。催眠術から一時的に解けたのか、彼女の瞳に正気の光が宿る。 「助けて……誰か……!」 蓮の唇から無意識に助けを求める声が漏れた。 「蓮くんッ!」 彩奈が体当たりで細身の男を突き飛ばし、髭面の男に掴みかかる。混乱の中でボスの指揮が乱れる。 「なっ、この女まだ動けるのか!」 「離してッ! 蓮くんを返して!」 蓮の意識が急速に遠のいていく。視界の端で暴れる彩奈の姿が、スローモーションのように映る。 「彩奈……さん……」 深い闇が蓮を包み込み、意識が完全に途絶えた。 だが彼は知らない。この瞬間、蓮の中で眠っていた 「別人格」 が、じわじわと目覚め始めていたことを。意識を失った蓮の唇が、微かに歪んだ笑みを刻む。暗い地下室で、何かが確実に変わり始めていた。
二つの心を束ねて
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