翌朝、美咲は警察署のデスクで事件資料に目を通していた。ここ数日、市内で不可解な行方不明事件が相次いでいる。共通点は、すべての被害者が特定の学校に関係していることだ。 「私立翠葉学園……か」 制服姿の美咲は、聞き込みと称して学校を訪れた。能力を使えば、誰にも怪しまれずに捜査できる。職員室への廊下を歩いていると、不意に背後から声をかけられた。 「何かお探しですか」 振り返ると、細身の教師が立っていた。銀縁の眼鏡の奥に、冷ややかな光を宿した瞳。美咲の直感が警鐘を鳴らす。 「あ、はい。進路指導の件で伺ったんですけど」 教師は怪しむ様子もなく微笑んだ。 「私は橘。数学を担当しています」 その名前を聞いた瞬間、美咲の胸に走った電流のような感覚。彼から漂う不穏な気配が、幽霊たちのそれと共鳴した。 (この人……何か知っている) 美咲は能力を発動し、橘の思考に干渉しようとした。しかし彼は涼しい顔で近づいてくる。 「先生、個人的な質問でもいいですか」 「どうぞ」 「最近、生徒たちの間で奇妙な噂があるって聞きました。未来を見通せる人がいるって」 橘の瞳が妖しく光った。 「予知能力ですか。興味深い話ですね」 彼の視線が、美咲の体を舐めるように動く。不意に背後から見えない手が伸び、腰を撫で上げた。 「んっ……」 幽霊だ。橘の周りに、数体の影が漂っているのが見えた。 「美咲さん、あなた特別な力を持っていますね。私と同じように」 彼の手が頬に触れ、冷たい指先が唇をなぞる。美咲は逃げようと後ずさりしたが、見えない手が制服のスカートを捲り上げた。 「待って、ここで……」 「構いませんよ。誰も来ない」 橘は彼女の耳元で囁いた。 「私の計画に協力してくれれば、快楽を与えましょう」 美咲は能力を使って彼の記憶に触れた。そこには、衝撃的な光景が広がっていた。来るべき破滅の日、橘は世界を混沌へと導こうとしている。 「あなた……何をしようとしてるの」 「浄化です。この腐った世界を、一から作り直す」 放課後、美咲は橘のアジトである準備室へ忍び込んだ。机の引き出しから、分厚いファイルを発見する。 「これが……計画書」 ページをめくると、詳細な手順が記されていた。特定の日時に多数の人々を集め、霊的なエネルギーを使って大規模な暴動を起こす計画だ。 「見つけた」 背後で気配が動いた。橘がドアにもたれかかり、微笑んでいる。 「探偵ごっこがお好きですね」 美咲は体勢を低くした。彼と対峙するには、能力を使いこなす必要がある。 「あなたの計画は止めるわ」 「できますかね。私の予知能力があれば、あなたの動きはすべて見えていますよ」 美咲は瞳を閉じ、幽霊たちに呼びかけた。彼らの力を借りれば、橘の未来視を攪乱できるかもしれない。 「やってみるわ」 彼女の体から魅了の波動が放たれ、橘の表情が初めて崩れた。
プールの底、霊の囁き
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