ある夜、悠真のスマートフォンが鳴った。画面にはルナの名前が表示されている。 「もしもし?」 出た瞬間、彼女の切迫した声が聞こえてきた。 「悠真さん……また、届いたんです。手紙が」 悠真は息を呑んだ。 「どこに?」 「自宅のポストに……写真も、入ってました」 彼女の声は震えていた。 「今から会える? 僕が行くから」 「……お願いします」 悠真はすぐにジャケットを羽織り、アパートを飛び出した。三十分後、ルナの住むマンションの近くで彼女と落ち合った。彼女は顔を青ざめ、携帯電話の画面を悠真に見せた。 「これが……その写真です」 そこには、ルナがカーテンを開けている部屋の中を撮影した画像があった。 「いつ撮られたんだ……」 「分かりません。でも、ずっと見られていたってことですよね」 彼女の体が小さく震えている。悠真は彼女の肩をそっと抱いた。 「大丈夫だ。僕がいる」 そして、彼は決意を固めた。 「ルナさん、護身術を教えたいんだ。僕、昔から武道をやっていて、護身術も少しは教えられるから」 「えっ……でも」 「いつまたあいつが近づいてくるか分からない。少しでも自分を守る手段を持っておくべきだ」 彼女は迷った末に頷いた。 「……お願いします」 近くの夜の公園で、悠真は彼女に手首の掴み方から教え始めた。 「まず、相手が手首を掴んできたら、力の逃げ道を作るんだ」 悠真がデモンストレーションをする。彼女の手首を優しく握り、逃げる動作を見せた。 「やってみて」 彼女の手首を握ると、柔らかい肌の感触が伝わってくる。彼女は真剣な表情で試みたが、うまくいかない。 「力を入れすぎだ。もっとリラックスして」 悠真は彼女の背後に立ち、姿勢を正すために肩に手を置いた。その瞬間、二人の体が触れ合い、彼女の香りが鼻をくすぐった。 「あ……」 彼女が小さく声を漏らし、悠真も一瞬動きが止まる。月明かりの下、彼女が振り返ると、二人の視線が絡み合った。 「悠真さん……」 彼女の瞳が潤んで、不安と信頼が入り混じった光を宿している。悠真は自然と彼女を見つめ返していた。 「君は一人じゃない。絶対に守るから」 彼女の頬が淡い光の中で赤らんだ。 「……ありがとうございます。悠真さんと出会えて、本当によかった」 その言葉に、悠真の胸の奥が熱くなる。護身術の練習は中断され、二人はただ見つめ合っていた。夜風が二人の間を吹き抜ける中、確かに何かが変わり始めていた。
闇を払い、君を抱く
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