エラベノベル堂

支配を超えた未来へ

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6章 / 全10

翌日、蓮が大学のアトリエに到着すると、異様な空気が漂っていた。キャンバスの前に椎名が立っている。 「よう、画家さん。いい朝だね」 蓮は全身が強張るのを感じた。 「何しに来た」 「茜君に伝言をね。彼女は僕のものだって、まだわかってないみたいだから」 椎名が懐から封筒を取り出し、蓮に渡す。中には蓮のアパートの写真、茜が出入りする姿、そして二人が親密になったことを示唆する画像が入っていた。 「君たち、いい関係になったみたいだね。だが、彼女は汚れた女だよ。僕がさんざん可愛がってやった」 蓮は封筒を握り潰した。 「彼女を侮辱するな」 「事実を言ったまでだ。それに、これを公表したらどうなるかな。大学生が無断で他人の家に泊まり込んで、しかも……わかるだろう」 椎名の唇が歪む。 「君の将来も、彼女の将来も、ここで終わらせてもいいんだ。あるいは……彼女を僕に返してくれれば、この写真はすべて消える」 蓮は椎名を睨みつけたまま、動けなかった。男は茜の弱みを握り、今度は蓮を脅迫の材料にしたのだ。その時、アトリエのドアが開いた。 「蓮、私を探して……」 茜が駆け込んでくる。だが、椎名の姿を見るなり、彼女の顔色が蒼白になった。 「あ、あなた……」 「久しぶりだね、茜君。君の新しい彼氏と話していたんだよ」 椎名が写真を茜に見せる。彼女は膝から崩れ落ちた。 「うそ……そんな……」 「君のせいだよ。僕から逃げるから、彼が巻き込まれたんだ」 椎名は満足げに笑い、アトリエを出ていった。 「また連絡するよ。いい返事を期待してる」 残された二人の間に重い沈黙が落ちる。茜が震えながら顔を覆った。 「ごめん……ごめん、蓮……私のせいで……」 涙が指の隙間から溢れる。 「あんたまで、壊されるなんて……」 「茜」 蓮は彼女の前に膝をつき、震える肩を抱き寄せた。 「お前のせいじゃない。あいつが悪いんだ」 「でも……写真があれば、あんたの未来も……」 「関係ない。そんなもので俺の未来は揺るがない」 蓮は彼女の顎を上げ、涙で濡れた顔を見つめた。 「俺はお前を選んだ。後悔してない」 「どうして……そこまでしてくれるの」 茜の声は掠れ、瞳は不安に揺れていた。 「わからない。ただ、お前を失いたくない。それだけだ」 蓮は彼女を強く抱きしめた。 「絶対に守る。あいつに渡さない」 茜が彼の胸に顔を埋め、声を上げて泣く。その体は小さく震え、心からの悲しみを吐き出していた。蓮は彼女の背を撫でながら、決意を胸に刻んだ。この女性を守り抜く。たとえ、何を犠牲にしても。やがて茜の泣き声が静まり、彼女は蓮を見上げた。 「蓮……私、怖いの。あの人は本気なのよ。私を壊す気なんだ」 「わかってる。だから、俺が立つ。お前は一人じゃない」 茜が彼の手を握り返す。その指先は冷たかったが、少しずつ温もりを取り戻しつつあった。 「離さないで……お願い」 「離さない」 二人は互いを見つめ合い、静かに唇を重ねた。恐怖と不安の中で、互いの存在だけが確かな支えだった。

6章 / 全10

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