エラベノベル堂

支配を超えた未来へ

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9章 / 全10

朝の光がカーテンの隙間から差し込み、二人の体を照らしていた。茜は蓮の胸に顔を埋めたまま、まどろみの中にいた。昨夜の情事の余韻がまだ体に残っている。 「蓮……」 彼女が小さく呟くと、蓮の腕が彼女を強く抱きしめた。 「もう少し、こうしていたい」 茜の言葉に、蓮は頬を緩める。 「ああ、俺もだ」 穏やかな時間が流れる。だが、その静寂は突然の着信音によって打ち破られた。茜が携帯を手に取ると、大学の事務局からの連絡だった。 「はい……」 彼女の表情が次第に硬質に変わっていく。通話が終わると、茜は携帯を握りしめたまま震え出した。 「どうした」 蓮が問うと、彼女は絶望に満ちた声で答えた。 「コンテストの審査員……変更になったって。椎名さんが推薦されたの」 蓮は息を呑んだ。 「あいつが審査員だと、俺たちが勝てる可能性は……」 「ないわ。最初からそういうつもりだったのよ。私を追い詰めて、屈服させるために」 茜は顔を覆い、声を上げて泣き出した。 「私、勝ちたかった。グラントを獲得して、新しい道を切り開きたかった。でも、全部壊された」 蓮は彼女の肩を抱き、落ち着いた声で言った。 「茜、聞いてくれ。勝利なんて必要ない」 「えっ……?」 彼女が涙で濡れた顔を上げる。 「俺たちは、コンテストに頼らなくても進める。グラントがなくても、俺は絵を描き続ける。お前も歌い続ければいい」 「でも、評価されなきゃ意味がないじゃない」 茜が反論する。 「誰の評価だ。審査員のか。あいつらに認められなくても、俺たちは創り続けられる。大事なのは、自分の信じる道を進むことだ」 蓮は彼女の手を握りしめた。 「俺はお前と一緒に生きたい。コンテストの結果なんて、関係ない」 茜は彼を見つめ、やがて小さく頷いた。 「蓮……あなたの言う通りかもしれない。私、勝利に囚われてた」 涙を拭い、彼女は深く息を吸った。 「よかった。あんたがいてくれて」 蓮は彼女の額に口づけを落とす。 「これからは、俺たちの道を切り拓こう。誰の許可もいらない」 二人は静かに見つめ合い、新しい決意を胸に刻んだ。椎名の陰謀が待ち受けていても、二人はもう怯えない。互いの愛が、何よりも強い武器だった。

9章 / 全10

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