エラベノベル堂

視線の奥

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少女剣士秋月蓮の押しかけ孕嫁生活 〜子作りは我が使命…受精するまで離さぬぞ!〜

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3章 / 全10

如月結衣が帰宅したのは、いつもより一時間遅かった。彼女は玄関で立ち尽くし、握りしめた紙を震える手で見つめている。 「どうしたの」 僕が声をかけると、彼女は弾かれたように顔を上げた。 「何でもない」 そう言って部屋に逃げようとしたが、その目が赤く潤んでいることに気づいた。テーブルの上に置き去りにされた紙には、模擬試験の結果が印刷されていた。合格点より十五点不足。 「これ、見たの」 背後から鋭い声。いつの間にか戻ってきた彼女が、僕を睨んでいた。 「プライバシーの侵害よ」 「玄関に落ちてたよ。見ない方が無理だ」 彼女は紙をひったくり、唇を噛みしめた。 「不合格。また不合格。何度受けてもダメ。私には才能がないのかもしれない」 声が徐々に小さくなり、最後は消え入りそうだった。 「問題用紙もある」 僕は言った。 「見せて」 彼女は怪訝な顔をしたが、抵抗する気力もないのか、鞄から取り出して渡した。僕は問題をパラパラとめくり、解答用紙と照らし合わせる。彼女がリビングで実家に電話しているのが聞こえた。 「ごめんね。またダメだった。努力不足だと思う。絶対に合格するから」 受話器を置いた後、彼女はソファに座り込んで動かなくなった。僕は分析結果を紙に書き出し、彼女の前に置いた。 「結論から言うと、暗記は完璧だけど応用ができてない。特に法条文の解釈問題で、条文そのものは覚えてるけど、具体例に当てはめる段階で思考が止まってる」 彼女が顔を上げた。 「何よそれ」 「要するに、インプット過多でアウトプット不足。過去問を解くだけじゃなくて、自分で問題を作って解くのが効率的」 僕はペンを回しながら続けた。 「例えば、刑法の窃盗罪。条文は知ってるでしょ」 「他人の財物を窃取するもの」 「じゃあ、ここにあるコーヒー缶を、君が寝ている間に僕が飲んだら窃盗になる?」 「なるわよ。私のものだから」 「じゃあ、君が僕に貸したペンを、返さずに使ってたら?」 「それも...人のものだから、窃盗」 「違う。占有離脱物横領。君が僕に貸した時点で、占有は僕に移ってる」 彼女は目を見開いた。 「そういう細かい判断が、君の場合できてない。条文を覚えるだけでなく、事案に当てはめる訓練が必要なんだよ」 沈黙が流れた。彼女は僕の書いた分析結果と、問題用紙を交互に見比べた。 「なんで、そんなことしてくれるの」 「暇だから」 僕は肩をすくめた。 「それに、うるさい同居人が夜中に泣かれると困るし」 彼女は少し眉を寄せ、小さな声で言った。 「...ありがとう。佐藤君」 初めて名前で呼ばれた。僕は照れくさくなって、別の話題を振った。 「明日から、僕が問題出してやるよ。その代わり、朝食はちゃんと食え」 「嫌よ。あなたの料理、味薄いから」 「文句あるなら自分で作れ」 彼女はふっと笑った。初めて見る笑顔だった。翌日から、僕たちの夜は問題演習の時間になった。彼女は相変わらず厳しいが、その目にあった冷たさが、少しだけ和らいだ気がした。

3章 / 全10

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