エラベノベル堂

謝罪ごっこ

18+ NSFW

小説ID: cmod0svrp0c5901llv9wqqyli

8章 / 全10

動画がアップロードされてから三時間。カイトはモニターの前で腕を組み、再生数とコメント欄を凝視していた。 「カイトさん、見てくださいこれ」 リナが興奮した声でスマホを差し出す。 「『笑った、このコスプレイヤー面白い』『炎上野郎ざまあ』『謝罪動画だと思ったら吹いた』……」 コメント欄は、先日までの誹謗中傷とは正反対の言葉で埋め尽くされていた。 「いける……!」 リナの瞳が輝く。 「『悪役令嬢、可愛すぎ』『演技の幅がすごい』『公式より公式っぽい』……みんな、褒めてくれてます」 カイトは静かに頷いた。 「演出が良かったのは、お前の演技だ」 「いえ、カイトさんの編集技術のおかげです。あのエフェクト、本当にすごかった」 リナはモニターを指差した。画面の中で、悪役令嬢の衣装を纏った彼女が、誹謗中傷のコメントを読み上げながら高慢に鼻で笑う。『あらあら、庶民の戯言は聞き飽きたわ』テロップとBGMが完璧に同期し、皮肉たっぷりの演出が視聴者の笑いを誘っていた。 「再生数、もう十万超えてます」 リナがPC画面を確認する。 「トレンドにも入ってる」 カイトは安堵の息を吐いた。彼の策は成功した。炎上野郎たちは、嘲笑の対象になり、静かに姿を消していく。 「……カイトさん」 リナが彼の方を向く。 「本当に、ありがとうございました」 その声には、深い感謝と、それ以上の感情が込められていた。 「私、もうダメかと思った。でも、カイトさんが助けてくれて」 カイトは彼女の髪をそっと撫でた。 「お前の才能だ。俺は只是非を映像にしただけ」 「謙遜しないでください」 リナが彼の手を握る。 「カイトさんがいなかったら、私、逃げてた」 二人の視線が交錯する。モニターの光が、リナの潤んだ瞳を照らしていた。 「……あの」 リナが口を開く。 「三年前のこと、もう隠さなくていいですよね」 カイトは息を呑んだ。 「気づいてたのか」 「うん。最初からじゃないけど、やっぱりそうだったんだって」 リナが微笑む。 「私のヒーロー」 その言葉に、カイトの胸が熱くなる。 「……名乗るつもりはなかった」 「知ってました。でも、教えてほしかった」 リナが彼に近づく。 「ねえ、お礼、させてください」 カイトは彼女の頬に手を添えた。 「……必要ない。お前が笑ってくれれば、それでいい」 「ダメです。私がしたいの」 リナは彼の首に腕を回し、背伸びをした。触れ合う唇。柔らかい感触。カイトは彼女の腰を引き寄せ、深く口づけを返した。

8章 / 全10

TOPへ