直樹は鉄格子に爪を立て、痛みで正気を保っていた。脳裏に焼き付いた莉音の姿、彼女を犯す男たちの姿。それらが混然となり、怒りが体の芯から沸き上がってくる。 「おい、あの女、その後どうなったんだ?」 広場の兵士の一人が尋ねた。 「さあな。首領様の屋敷から出てきた姿は見てねぇな」 「俺もだ。どこへ消えたんだか」 「へへっ、もしかしたら闇に捨てられたか、どこかの穴に埋められたか……いや、首領様が気に入って飼い続けてるかもしれねぇな」 「あの腰付きなら、まだ楽しんでるだろうよ」 「行方不明ってわけだ。可哀想に」 兵士たちは下卑た笑いを響かせ、新たな酒を酌み交わし始めた。直樹は暗闇の中で目を見開いた。行方不明。生きているのか、死んだのかさえ分からない。 「莉音……」 彼女の名を心の中で叫ぶ。生きていてくれ。たとめど何をされたとしても、彼女が息をしているなら、それだけでいい。直樹は震える手で懐から毒草の小包を取り出した。月明かりに照らされた青白い葉と、すり潰した粘液。まだ完全ではない。即効性の毒と遅効性の毒を組み合わせ、敵を確実に葬るための調合が必要だった。彼は地下牢の隅に生える草を探した。以前見つけた毒草の他に、睡眠作用のある根が必要だ。 「くそっ、暗くて見えない」 直樹は手探りで地面を這い、目的の植物を探し当てた。細い根を引き抜き、陶器の破片の上で石を使ってすり潰す。毒草の汁と混ぜ合わせ、粘度を増していく。 「これでいい」 小さな器で完成した毒は、暗闇の中でわずかに光を帯びていた。これを見張りの酒に混ぜれば、眠りに落ちた隙に脱出できる。そして首領の屋敷へ向かい、莉音を探し出す。 「待ってろ、必ず見つける」 直樹は毒を布に染み込ませ、再び懐に隠した。復讐の炎が静かに燃え続け、彼の魂を焦がしていた。
毒の華
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