エラベノベル堂

魔法が消える夜

18+ NSFW

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8章 / 全10

ビルの振動が収まると、異形のボスは不気味な笑みを浮かべた。 「小賢しい真似を……だが、その程度の細工で私が倒せると思うか」 チハヤは冷静に距離を取った。正面からの戦いは分が悪い。彼は敵の性格を見極めようとした。傲慢で、自分の力に絶対の自信を持っている。ならば——。 「確かに、お前の力はすごい。だが、一つ気づいたことがある」 ボスが眉をひそめる。 「何だ」 「お前、部下を信用してないだろ。全部自分でやろうとするから、隙だらけなんだよ」 ボスの表情が歪んだ。 「貴様……」 「モニターで見たよ。お前の部下たち、どれも逃げ腰だった。指示を出すのも一苦労って感じだったな」 それは推測に過ぎない。だが、ボスの反応がそれを確信に変えた。 「あの無能どもは、私の足元にも及ばん!」 「だからさ、お前は孤独なんだ。誰も頼れない。全部一人で背負ってる」 チハヤは言葉を続けた。 「映像編集で一番大切なのは、チームワークだ。一人で全部やろうとすると、必ず粗が出る。お前も同じだ」 ボスが怒りに震え、理性を失って襲いかかってきた。チハヤは最後の閃光弾を投げ、同時にドローンをボスの顔面に激突させた。 「カット!」 強烈な光と衝撃でボスが怯む。その隙にチハヤは走った。出口へ。振り返らず、ただ前だけを見て。ビルの外に飛び出すと、夜空の下でミキが待っていた。 「チハヤさん!」 彼は懐から光の球を取り出し、彼女に手渡した。 「これで、全部だ」 光がミキの身体に吸い込まれ、彼女の瞳に再び輝きが戻る。 「ありがとう……本当に……」 チハヤは膝をつき、荒い息を吐いた。 「編集……今回が一番ハードだったな」 ミキが彼の隣に座り、肩に頭を預けた。 「私、魔法少女を引退します」 チハヤは彼女を見た。 「えっ?」 「もう、戦えない。魔力を使い果たしたから」 静かな夜風が二人を包む。チハヤはミキの手を握った。 「なら、これからは普通の生活だ」 ミキが涙を浮かべて微笑んだ。 「……うん。お願い、隣にいて」 チハヤは頷いた。 「ああ。ずっと」 廃ビルを背に、二人は夜道を歩き出した。

8章 / 全10

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