エラベノベル堂

風が変えた夜

18+ NSFW

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3章 / 全10

一週間が経ち、メニュー開発は難航していた。 「だめだ、これも違う」 結花は試作のシチューを味見し、深いため息をついた。何度作り直しても、カトレアの洗練された味に及ばない気がしてならない。 「素材は間違ってないはずなんだが」 岳も首を傾げる。アウトドアサークルで培った知識を活かし、産地や鮮度にこだわった食材選びをした。それでも、何かが足りない。 「兄さん、また空回りしてる」 厨房の入り口から、凛とした声が響いた。振り返ると、岳の妹・莉菜が腕組みをして立っていた。 「莉菜、どうしてここに」 「大学の講義が早く終わったから。兄さんが結花さんのお店に入り浸ってるって聞いて、見に来たの」 莉菜は店内をゆっくりと見渡し、呆れたようにため息をつく。 「やっぱり」 「やっぱりって何だよ」 「兄さんの分析は正しいわ。データも、戦略も。でも、決定的に足りないものがある」 莉菜は結花と岳を交互に見つめた。 「二人は、お互いをどう思ってるの?」 結花の顔が瞬時に赤く染まる。 「えっ、それは」 「わかるわよ。兄さんが結花を見る目、結花が兄さんの話を聞くときの表情。両想いなのに、気づかないふりしてるでしょ」 岳は視線を逸らし、結花はエプロンの裾をぎゅっと握りしめた。 「それが店と何の関係が」 「関係あるから言ってるの」 莉菜はまっすぐに結花を見つめた。 「この店、寒くない?」 「えっ」 「冬場の客足が悪いのは、カトレアのせいだけじゃない。この場所、風の通り道になってるでしょう。入口から冷気が入ってきて、奥まで届いてる」 結花はハッとして店内を見渡した。言われてみれば、確かに冬場は客が少なかった。 「兄さんは地形や風の流れに詳しいはずなのに、見落としてる。どうしてだと思う?」 莉菜は意地悪く微笑んだ。 「結花さんのことばかり気にしてるからよ」 図星を突かれ、岳は顔をしかめた。 「店の構造的欠陥と、二人の想い。どっちも向き合わないと、何も変わらないわよ」 莉菜の言葉が、静かに重く響いた。

3章 / 全10

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