エラベノベル堂

宿霊の凪

18+ NSFW

小説ID: cmok39idz04cv01qgdn7lz3ls

7章 / 全10

翌朝、奏人が再び仕事に出かけた後、凪はリビングのソファに座り込み、放心状態で窓の外を眺めていた。昨夜のこともあり、体は鉛のように重く、心は疲弊しきっていた。その時、突然電話が鳴り響いた。静寂を切り裂く電子音に、凪はびくりと肩を震わせた。 「はい……」 受話器を取ると、聞き慣れた声が耳に届いた。 「凪か。父さんだ」 実家の父だった。穏やかで、どこか懐かしい声。 「お父さん?どうしたの、急に」 「……お前、何か変わったことがあっただろう」 その言葉に、凪は息を呑んだ。 「えっ……」 「嘘はつくな。父さんにはわかる」 父は静かに続けた。 「お前が生まれた時から、何か特別なものを感じていた。そして今、その時が来たんだ」 凪は受話器を握りしめた。 「お父さん、どういうこと?」 「父さんはな、少しだけ未来が見えるんだよ。予知能力……と言えばいいのか。お前が今、何かに巻き込まれていること、ずっと前から知っていた」 心臓が早鐘を打つ。 「じゃあ、この霊たちのことも……」 「ああ。お前が選んだ道だ。誰かに強いられたわけじゃない」 父の声は優しく、しかし力強かった。 「恐怖で目を背けるな。彼らはお前に救いを求めている。お前がその運命を自らの意志で受け入れれば、道は開ける」 「でも、私は……怖いの。体も心も、もう限界で」 涙が溢れる。 「それでも、誰かを救いたいと思う心があるはずだ。お前は幼い頃から、そういう子だった」 凪は過去の記憶を辿った。迷い込った子猫を庇い、怪我をしたことがあった。いつだって、彼女は目の前の弱者を放っておけなかった。 「お父さん……私は、どうすればいいの」 「答えはお前の中にある。心に耳を澄ませるんだ」 通話が切れた後、凪は受話器を胸に抱いた。体内から輝の声が響く。『お前の父は、何もかも見抜いていたのだな』 「うん……私、やっぱり逃げちゃだめなんだね」 凪は涙を拭い、立ち上がった。窓の外には、無数の影が揺らめいていた。彼女は静かに目を閉じ、そして開いた。その瞳に、もう迷いはなかった。 「来て。あなたたちの未練、全部受け止めるから」

7章 / 全10

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