エラベノベル堂

マイクが拾った恋

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3章 / 全10

「次の相談です! 先生の寝ぐせを指摘したいのですが、どうすればいいでしょうか。二年生、女子」 真帆が明るく読み上げると、湊がマイクに顔を寄せた。 「それ、先生に直接言えばいいじゃん」 「そういう問題じゃないよ! 先生に対して失礼じゃないかなって、悩んでるんだと思う」 「悩みすぎ。寝ぐせくらい、どうでもいいだろ」 真帆は首を振った。 「湊はわかってないなあ。女子にとって、先生の印象だって大事なの」 「は? 何で」 「だって、かっこいい先生だったら、寝ぐせくらい直したくなるでしょ?」 「お前、どの先生のこと言ってんの」 「それは……聞かないで」 真帆は視線を逸らした。湊がニヤリと笑う。 「あ、もしかして特定の先生のこと?」 「違うよ! 一般的な話として!」 「嘘つけ。顔赤いぞ」 「赤くない!」 二人のやり取りに、放送室外からクスクスと笑い声が聞こえた気がした。真帆は咳払いをして、気を取り直した。 「えー、相談者さんへ。先生の寝ぐせを指摘するのは、確かに勇気がいりますよね。でも、思っているだけでは伝わりません。私は、紙に書いてそっと先生の机に置く、というのはどうでしょうか」 「ストーカーかよ」 「ストーカーじゃない! 優しいメッセージを添えて」 「『寝ぐせ直してください』って? 優しくも何もないだろ」 「そこは、『先生、今日も素敵な一日を! あ、髪がちょっと……』みたいに」 「回りくどい!」 湊が呆れたように笑った。 「お前の答え、変だけど」 「変って何さ」 「でも、それがいいんじゃね」 湊がぽつりと言った。真帆はドキリとした。 「えっ、今なんて?」 「聞こえなかった? ならいいや」 湊はわざとらしくメモをめくった。 「次の相談、ないの?」 「あ、うん」 真帆は胸の奥が暖かくなるのを感じた。湊との掛け合いが、心地よいリズムになっていた。放送を終えた後、二人は窓辺に並んで立った。 「今日も誰か聞いてくれたかな」 「聞いてたろ。お前の声、デカかったし」 「デカくない!」 「デカいって。マイクの近くで叫ぶな」 湊が笑う。その笑顔を、真帆は見つめた。 「湊」 「ん?」 「……なんでもない」 言いかけて、やめた。この心地よい時間が、もう少し続けばいい。真帆はそう思いながら、校庭を走る生徒たちに目を向けた。

3章 / 全10

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