エラベノベル堂

マイクが拾った恋

18+ NSFW

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4章 / 全10

「次の相談です! 隣の席の人が消しゴムを借りすぎるんです。自分のを買ってほしい。一年生、男子」 真帆がメモを読み上げると、湊がマイクに向かって息を吹きかけた。 「ぶっ」 というノイズが走る。 「湊! やめてよ!」 「……ごめん、ちょっと待って。これ、相談者の性格が問題だろ」 「えっ? どういうこと?」 「消しゴム貸せって言われて、断れない自分が悪いんだよ」 「そんなことないよ! 断るのって勇気がいるし」 「勇気? ただ『無理』って言えばいいだけだろ」 湊はマイクに顎を乗せた。 「相談者、聞いてるか。お前、断れないのは相手に借りを作ってるからだ。『貸してくれてありがとう』じゃなくて、『また借りちゃった』って思われてる。だから借りる側は遠慮しない」 「……うわ、鋭い」 真帆は思わず呟いた。 「相手が悪いんじゃなくて、お前の態度が『どうぞ使ってください』って言ってるんだよ。消しゴム一つ貸せない関係なら、最初から関わるな」 真帆は湊の横顔を見つめた。いつもは適当なことばかり言っているのに、時折こうして核心を突く。 「湊って、本当に頭いいね」 「は? 今さら何言ってんの」 「だって、すごいよ。消しゴムの貸し借り一つで、人間関係のことまで考えられるなんて」 「……お前、簡単なことしか褒めないよな」 「褒めてるんだよ!」 湊は視線を逸らした。耳が少し赤い気がした。 「調子に乗るな」 「乗ってない!」 放送を終えて、二人は機材の片付けを始めた。真帆は湊の手際よく動く指先を眺めていた。 「湊」 「何」 「……やっぱりなんでもない」 言いかけて、口をつぐんだ。ドキドキしている自分に気づいたからだ。湊の鋭い指摘、それをさらりと言ってのける姿。真帆は胸の奥がざわめくのを感じていた。これは、ただの相棒への尊敬じゃないかもしれない。 「真帆、何ぼーっとしてんの」 「ぼーっとしてない!」 「じゃあ早く帰るぞ。腹減った」 「うん」 真帆は湊の背中を追いながら、自分の心のありきたりじゃない何かが動き出したことを自覚していた。

4章 / 全10

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