エラベノベル堂

マイクが拾った恋

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5章 / 全10

「視聴率、上がってきましたよ」 田代先生が笑顔で告げた。部室の机の上には、リスナーからの投書が山積みになっている。 「お前らの掛け合い、意外と好評みたいだな」 真帆は嬉しさを噛み締めた。放課後の部室。窓から差し込む光が、積み上げられた投書箱を照らしている。 「ねえ湊、やったね!」 「……別に。俺は何もしてないし」 湊はそっぽを向いた。その横顔を、真帆はぼんやりと見つめた。最近、湊のことが気になる。視線を感じるのか、湊が眉をひそめる。 「何見てんの」 「見てない!」 真帆は慌てて視線を逸らした。翌日の放送。真帆は新しい投書を手に取った。 「今日の相談です! 密かに想っている人がいます。どうやってアプローチしたらいいでしょうか。三年生、女子」 真帆の心臓が跳ねた。密かに想っている人。その言葉が、自分自身の胸に突き刺さる。 「……ふーん」 湊がマイクに顔を寄せる。 「まず、相手は誰? 同じクラス? 部活?」 相談には詳細がない。 「情報が足りないな。相手との距離感によるだろ」 「えっと、仮に……近くにいる人だとしたら?」 真帆は声が震えるのを必死に隠した。湊は少し考えてから口を開いた。 「近いなら、わざわざアプローチしなくていいんじゃね」 「えっ?」 「近くにいるなら、いつでも話せるだろ。無理に動くより、今の距離を保てばいい」 真帆の胸が締め付けられた。今の距離を保つ。それは、今のまま相棒でいいということ。 「……そう、だね」 声が小さくなった。 「でもさ」 湊が続けた。 「もし、相手がお前のこと何とも思ってなかったら、って悩んでるなら、確かめた方がいい」 「確かめる?」 「態度でわかるだろ。相手がお前を見てるかどうか」 真帆は湊と目が合った。湊が自分を見ている。その瞳に、真帆の顔が映っている。 「湊は……」 言葉が詰まる。湊はすぐに視線を逸らした。 「ま、一般論な。相談者は、勇気出して動けばいいんじゃね」 授業が終わった後、二人は並んで歩いた。夕日が廊下をオレンジ色に染める。 「湊、さっきの相談……」 「ん?」 「……ううん、なんでもない」 言えなかった。この気持ちを、まだ言葉にできない。湊が突然立ち止まった。 「真帆」 「何?」 「……いや、なんでもない」 二人の間に、言えない言葉が漂っていた。

5章 / 全10

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