昼を少し過ぎても、焼きそば屋台の前から列はなかなか途切れなかった。鉄板の上では麺が音を立て、ソースの香りが熱気に混じって校舎の廊下まで流れていく。隼太は皿を受け取りながら、注文札と材料の減り具合を何度も見比べた。そこで、胸の奥に小さな引っかかりが生まれる。仕入れたはずの麺の箱が、残り方としては少し少なすぎた。 「葵奈、麺、あとどれくらいある」 「え、今ので十分持つはず……あ」 彼女が在庫置き場を見て、表情を変える。数え方の勘違いか、最初の取り分けで少しずれたらしい。さらに次の客の札を見た隼太は、別の違和感にも気づいた。大盛り一つが普通盛り二つに変わっている。注文の受け方が途中で混ざっていたのだ。 一瞬、屋台の流れが止まった。目の前の客が不安そうにこちらを見る。隼太はすぐに深く息を吸った。 「葵奈、普通盛りを先に出す。大盛りは具を少し増やして対応できるか確認する。麺は焼き方を薄くして回転を上げる」 「了解。私、札の確認してくる」 声は短くても、迷いはなかった。隼太は鉄板の火を少し強め、手順を崩さずに次々と焼き上げる。足りないなら、残る材料で無理なく回すしかない。彼は皿の並べ方まで変え、待ち時間を少しでも短く見せるようにした。 その間に葵奈が、札を持ったまま列の前へ戻る。彼女は困った顔の客たちを見て、ぱっと笑った。 「ごめん、ちょっとだけ屋台の方が空回りしてた。でも、味は空回りしないから安心して」 「そんな説明あるかよ」 と笑いがこぼれる。葵奈はそれを逃さず、両手を広げて肩をすくめた。 「今日は特別サービスで、焼きたての香りを多めにお届け中です」 くすくすとした笑いが列のあちこちに広がる。さっきまでの不満は、彼女の軽口でほどけていった。 隼太はその隙に、メモ帳へ残りの材料と対応順を書き込み、必要な人にだけ小さく指示を飛ばす。冷静に見直せば、致命的ではない。少しの配分調整と、注文の取り直しで十分立て直せる。そう判断すると、焦りは形を失っていった。 「隼太、次の大盛り、普通に変更で大丈夫って」 「わかった。じゃあ、少し具を増やす」 「そのほうがむしろお得っぽいよね」 「そういう言い方をするな」 だが、葵奈の言葉で客たちがまた笑う。行列の空気は、困惑から待つ楽しさへと変わっていた。隼太は鉄板の前で手を止めず、葵奈は列の先で声を弾ませる。混乱はまだ完全には消えていない。それでも、二人のやり方でそれはもう騒ぎではなく、少しだけ賑やかな勢いになりつつあった。
放課後屋台と公開告白
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