エラベノベル堂

不良少女と年下たち

全年齢

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4章 / 全10

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放課後の商店街は、昨日より少しだけ人が多かった。朱莉と並んで歩くのも、もう完全に慣れたとは言えない。それでも、彼女の隣にいると、通りの空気が妙に落ち着いて見える瞬間がある。たぶん、本人が落ち着いているわけではないのに、困っているものを見つけたとたん、そちらへまっすぐ飛んでいくからだ。 その日もそうだった。駄菓子屋の前で、低い声がして、振り向くと小さな男の子が店先の段差につまずいていた。転びきる前に朱莉が前へ出る。手首を取るでもなく、肩を抱くでもなく、ただ目の前にすっと立ちはだかって、地面を指さした。 「そこ、足引っかかるだろ。ちゃんと見ろ」 言い方は荒いのに、男の子は泣くより先にうなずいた。朱莉はそれを見て、満足したように頷く。だが次の瞬間には、段差の位置を確かめるみたいにしゃがみこみ、ついでに店先の箱まで動かし始めた。 「おい、それ、そこ置くな。危ねえだろ」 店主があっけに取られている。俺は思わず吹き出しそうになった。そんな大げさに動かすほどの段差じゃない。けれど朱莉は本気で、子どもが一歩でもつまずく可能性を消したいらしかった。 少し歩けば、今度は自転車を押していた女の子が道端で困っていた。荷物が多すぎて、ハンドルがふらついている。朱莉は当然のように寄っていき、返事を待たずに荷物を一つ受け取った。 「こんなの持ってたら、曲がる時あぶねえだろ」 「え、でも」 「でもじゃねえ。先にこけたらどうすんだ」 強引なくせに、手つきは雑じゃない。女の子が礼を言うと、朱莉は気まずそうに視線を逸らした。褒められるのに慣れていないみたいで、その反応だけは少し意外だった。 俺はそのたびに笑ってしまう。怖い顔で前に出るのに、やることは過保護すぎる。道の端に落ちた小石まで気にするみたいに、朱莉は子どもたちの周りを動き回る。けれど、なんでそこまで必死なのかは見えてこない。ただ面倒見がいい、で片づけるには熱がありすぎた。 「なに笑ってんだよ」 朱莉がこちらを見る。 「いや、別に」 「別に、じゃねえ顔してたぞ」 そう言われると余計に笑いが込み上げる。俺は口元を押さえながら首を振った。 「だって、おまえ、ちょっとやりすぎ」 「うるせえ。危ないのが悪い」 断言してから、朱莉はふいと前を向いた。その横顔は、いつものぶっきらぼうさの奥に、誰にも触らせたくないような固さを含んでいた。 近所の子どもたちに向ける目だけが、やけに真剣だ。助けたいのか、守りたいのか、それとも別の何かなのか。俺は笑いながらも、その本音だけはどうしても測りきれず、夕方の雑踏の中で朱莉の背中を見送った。

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