エラベノベル堂

不良少女と年下たち

全年齢

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5章 / 全10

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放課後の商店街は、いつもより少しだけ騒がしかった。朱莉がいると、通りの空気まで落ち着かないのに、不思議と目は離せない。俺はいつものように半歩遅れて彼女の隣を歩いていた。すると、八百屋の前で小さな箱がひっくり返る音がした。 見ると、店先に積まれていた文房具の箱が崩れて、色鉛筆や消しゴムが歩道へ転がっている。近くにいた小学生たちが驚いて立ち止まり、どう拾えばいいのか迷っていた。俺が慌てて駆け寄るより先に、朱莉がすっと前へ出た。 「どけ。踏むだろ」 ぶっきらぼうな声なのに、誰も逆らえない勢いがあった。朱莉はしゃがみこむと、散らばった物を手早く拾い集め始めた。だが、雑に集めるわけじゃない。折れやすいものはそっと脇に分け、箱の向きまで直してから、店先の台に戻していく。店主が 「ああ、悪いね」 と声をかけると、朱莉は目も合わせずに返した。 「最初からちゃんと固定しとけ」 その言い方は相変わらず刺々しい。けれど、拾い終えたあとも子どもたちが手を出す前に一度確認し、危ない角がないかまで見ているのを見て、俺は思わず息をのんだ。怖い人なら、こんな面倒なことをわざわざしない。噂の鋭さは本物でも、その向き先はむやみに人を傷つけるものじゃない。 「手伝う」 俺がそう言ってしゃがむと、朱莉は当然みたいに俺へ半分押しつけてきた。 「じゃあこっちやれ。遅え」 「おまえが早すぎるんだよ」 文句を言いながらも、散らばった最後の数本を拾う。朱莉はそれを見て満足したのか、ようやく立ち上がった。ところが次の瞬間、今度は別の小学生が店先の段差につまずきそうになり、朱莉はまた即座に身を乗り出す。 「だからそこ危ねえって言ってんだろ」 勢いで注意しながら、彼女は俺の袖まで引っ張った。 「おまえもそこ、突っ立ってんな。邪魔」 「いや、邪魔って言うなら最初から呼ぶなよ」 「呼んでねえ。勝手についてきたんだろ」 確かにそうだが、言い方がひどい。なのに、子どもたちの前では妙に的確で、手を伸ばす場所を間違えない。俺は苦笑しながら、彼女の動きを追った。朱莉は何でも先回りするくせに、周りの反応を待つ余裕がない。自分のペースで進めて、気づけば全員をその流れに巻き込んでいる。 店主が困ったように笑っている。小学生たちは、怖がるどころか、朱莉の後ろをちらちら見ている。俺もそのひとりだった。彼女は乱暴で、強引で、言葉もきつい。それでも、ただ怖いだけの人間なら、こんなふうに転んだ箱ひとつで本気で動かない。 「ほら、終わり。行くぞ」 朱莉はそう言って、まだ拾いきれていないものを見つけると、また一歩戻った。俺はため息をつきながら、その背中を追う。助けられたのは店先だけじゃない。あの騒ぎの中で、俺の中にあった朱莉への怖さも、だいぶ形を変えていた。

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