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不良少女と年下たち

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8章 / 全10

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放課後の商店街は、妙にざわついていた。いつもの雑音に、笑いをこらえるような声が混じっている。何だろうと思って角を曲がると、朱莉が一人、雑貨屋の前で腕を組んで立っていた。赤い髪が夕方の光を受けて目立つ。しかも、周囲にいる連中は皆、わざとらしく視線を泳がせている。 「年下好きなんだって?」 誰かがそう囁いた瞬間、空気がはじけた。 噂はすぐに広がったらしい。朱莉は眉間にしわを寄せ、舌打ちひとつでその場の熱を押し潰そうとする。 「誰だ、そんなくだらねえこと言ってんの」 声は低く、いつもよりさらに荒い。けれど、次に続いた脅し文句が、あまりにも朱莉らしくて、俺は逆に力が抜けた。 「次言ったやつ、商店街の端から端まで走らせる。しかも、靴ひも片方だけ結んでな」 沈黙が落ちたあと、最初に吹き出したのは俺だった。朱莉はぎろりと睨んでくる。だが、肝心の脅しが妙に子どもじみていて、笑いをこらえる方が無理だった。 「笑うな」 「いや、だって、それ脅しになってるか?」 「なってるだろ」 「靴ひも片方って」 言い終える前に、朱莉はさらに声を荒げた。 「うるせえな。転んだら痛えだろ」 その理屈は間違っていないのに、あまりに真顔で言うものだから、周囲の何人かまで肩を震わせている。朱莉はそれに気づいて、ますます機嫌を悪くした。 「あと、変な目で見てくるやつも、まとめて説教するからな。立ってるだけで目障りなんだよ」 説教、という単語の選び方までどこか抜けている。怖い顔で威圧しているはずなのに、肝心の中身が妙に生活感に寄っていて、空気は重くなるどころか、逆に妙な温度を帯びた。 噂の出どころらしい連中が、しまいには目を合わせないようにして後ずさる。朱莉はそれを見て鼻を鳴らしたが、完全には怒りきれていないようにも見えた。振り上げた拳の行き先が、実際にはかなり不器用なのだ。 「おい」 低い声で呼ばれて、俺は笑いを引っ込めた。 「まだ何か言いたいことあんのか」 「いや、別に」 「別に、じゃねえ顔してたぞ」 その返しまでいつもの調子で、余計におかしい。朱莉は本気で周囲を黙らせたいのに、脅せば脅すほど、肝心の抜けた部分が見えてしまう。俺はなんとか息を整えながら、商店街の向こうでこらえきれず笑っている子どもの姿を見つけた。朱莉はまだ気づいていない。そのことが、ますます場をややこしくしていた。

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