放課後の商店街は、昨日までのざわめきがまだ少し残っている気がした。朱莉はいつものように前を歩いているのに、今日は何となく足取りが乱暴だった。噂を笑いものにされたことが、まだ尾を引いているのだろう。脅し文句が抜けていると周りに笑われた、その手触りだけが、彼女の中に刺さっているように見えた。 俺は隣を歩きながら、ここ数日の出来事を頭の中でつなげていた。泣いていた小学生にハンカチを渡したこと。年下の子を見つけるたび、目の色が変わること。困っている相手には驚くほど真剣なのに、言葉はいつも荒っぽいこと。助けるたびに場をかき回し、終わったあとで不機嫌そうに腕を組むこと。怖いから近づけない、と言われるより先に、自分で空気を壊してしまうこと。 そこまで思い返して、ふと気づいた。朱莉の不良らしさは、誰かを傷つけたい本気からだけではない。強く見せたい見栄と、見捨てられたくない寂しさが、同じ場所で絡まっている。だからこそ、威圧するほど周りを気にして、わざと乱暴に振る舞うのだ。平気な顔でいれば、誰にも見つけてもらえない気がしているのかもしれない。 「なに黙ってんだよ」 朱莉が前を向いたまま言った。 「いや、別に」 「別に、じゃねえ顔してる」 その言葉に、俺は苦笑するしかなかった。たぶん朱莉は、俺の顔より先に、俺が今何を考えているかまで気づいている。俺が言葉を探している間も、彼女は歩調を緩めない。ただ、さっきまでより少しだけ肩が硬い。 「おまえ、また笑ってんのか」 「笑ってない」 「嘘つけ」 きっぱり言い切るのに、その声にはさっきの鋭さがない。俺はそこで確信した。朱莉は、俺にだけは本音を隠しきれなくなっている。荒っぽく突き放すふりをしても、気まずさがにじむ。気にしていないふうを装っても、耳の先だけが落ち着かない。 商店街の角を曲がると、夕方の光が二人の影を長く伸ばした。朱莉はそれを見て、ほんの一瞬だけ黙る。見栄を張るための強さも、寂しさを隠すための乱暴さも、全部その影の中に混ざっているようだった。 俺は何も言わずに、その横顔を見た。朱莉は視線を逸らしたまま、低く吐き捨てる。 「……変なこと考えてんじゃねえぞ」 その一言が、いつもよりずっと弱く聞こえた。
不良少女と年下たち
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