放課後のチャイムが鳴ると、俺の体は勝手に動き出した。また旧校舎裏だ。昨日と同じ場所。彼女が待っているはずの場所。校舎の裏に回り込むと、案の定、凛月先輩は壁に背を預けて待っていた。夕日が彼女の輪郭を金色に染めている。 「来たわね、悠陽」 彼女は満足げに微笑むと、俺に手招きした。 「こっちに来なさい」 「あ、はい」 俺はおずおずと彼女に近づいた。 「いい子ね。待ってたわ」 彼女はいきなり俺の頬に手を添えた。冷たい指先が、熱を持った肌に気持ちいい。 「先輩……」 「ん?何か言いたいことあるの?」 「いえ、その……」 彼女はクスクスと笑った。 「あんたって本当に分かりやすいわね。顔に出るのよ、全部」 彼女の手が頬から首筋へ、そして襟元へと滑り落ちていく。その動きに、俺は息を呑んだ。 「あんたさ、私のこと好きなんでしょ?」 「……はい」 「じゃあ、もっと近くにいらっしゃいよ」 彼女は俺の手を引いて、自分の体のほうへ引き寄せた。距離が一気に縮まる。彼女の甘い香りが鼻腔を満たした。 「先輩、何を……」 「何って、いい子にしてなさいよ」 彼女は俺の頭を抱えるようにして、自分の胸に押し付けた。柔らかい感触が顔全体を包み込む。俺の心臓は早鐘を打っていた。 「んっ……先輩、苦しいです……」 「嘘つき。嬉しいくせに」 彼女の声は頭上から降ってくる。胸に押し付けられたまま、俺は動けなかった。いや、動きたくなかったのかもしれない。 「悠陽、あんたって本当に可愛いわね。男の子なのに」 「男だからいいんです。先輩が好きなのは」 「ふふ、言うようになったじゃない」 彼女は俺の髪を梳くように撫でた。その手つきは、まるで子供をあやす母親のようだった。 「私ね、こういうの好きなのよ。素直で、無垢で、私の言うことを何でも聞くような男の子」 その言葉に、背筋が震えた。何か、普通じゃない響きがある。 「……俺、先輩の言うことなら何でも聞きます」 「本当?何でも?」 「はい」 彼女は満足げに笑うと、さらに強く俺を抱き寄せた。柔らかい曲線が、俺の体に押し付けられる。 「いい子。じゃあ、これから毎日ここに来て。いいわね」 「毎日……ですか?」 「嫌なの?」 「いえ、嫌じゃないです。嬉しいです」 「ならいいわ」 彼女は俺を解放した。でも、その距離はまだ近い。彼女の瞳が俺を見上げている。俺より背が低いのに、何故か見下ろされているような不思議な感覚。 「悠陽、あんた私のものだからね。忘れないで」 その言葉に、また背筋が震えた。 「はい、先輩」 彼女は満足げに微笑むと、俺の唇に指を這わせた。 「……いい子」 その瞬間、俺は彼女に完全に捕らえられたことを悟った。逃げられない。いや、逃げたくないのかもしれない。
不良少女と年下たち
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