エラベノベル堂

忘れ物より大事な約束

全年齢

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4章 / 全10

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昼休みのチャイムが鳴ると、心菜は桜奈と結莉と目を合わせた。三人は言葉少なに立ち上がり、教室を出る。廊下は昼のざわめきで満ちていたが、心菜の耳には自分の靴音ばかりが大きく響いた。購買部へ向かう道すがら、桜奈が小声で言う。 「とにかく、代わりになるものを探そ。気づかれにくいのが一番」 結莉も頷いて、財布を握り直した。心菜はうなずいたものの、胸の奥は落ち着かなかった。何か一枚あれば、それで今日はしのげるかもしれない。だが、購買の棚に並ぶ品は、どれも事情に合わないものばかりだった。派手すぎたり、形が違いすぎたり、逆に人目につきそうだったりする。 桜奈が手に取った薄手の品を見て、心菜は首を振る。 「これだと、余計に目立つかも」 結莉が別の棚を見ていたが、やがて苦笑した。 「必要なものって、意外とこういう場所にはないね」 心菜は唇を噛んだ。買えば済むと思っていたわけではない。けれど、手がかりのないまま時間だけが過ぎるのはつらかった。三人であれこれ見比べても、これなら大丈夫と言えるものは見つからない。あきらめに似た沈黙が落ちた、そのときだった。 「三人とも、ちょうどいいところにいた」 振り向くと、担任の先生が腕を組んで立っていた。急な委員会の手伝いを頼みたいらしい。心菜は思わず桜奈と結莉を見たが、二人も同じように目を丸くしている。 「今から、ですか」 結莉が控えめに聞くと、先生は急ぎの用だとだけ言って、書類の束を軽く持ち上げた。購買部での作戦は、まだ何も解決していない。なのに、別の仕事が上から重なってくる。 心菜は胸の奥で小さく息を呑んだ。ここで断れば目立つ。引き受ければ、さらに動きにくくなる。桜奈が一瞬だけ心菜を見てから、先生に向き直る。 「手伝います」 そのひと言で、結局三人とも頷くしかなくなった。心菜は受け取った書類の角を指先で押さえながら、これからの動き方を必死に考える。購買で失敗したあとに、委員会の手伝い。隠す工夫は増えるのに、使える時間は減っていく。心菜は何気ない顔を作ろうとしたが、桜奈の小さなため息だけが、やけに頼もしく聞こえた。

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