舞は踏み台の二段目に立ち、腕を伸ばして棚の奥の埃を拭いていた。 「あと少し……」 手先が震える。足元への不安と、下から見上げられるかもしれない恐怖が、身体を強張らせる。 「舞、危ないぞ」 突然、背後から声がかけられた。 「えっ?」 驚いて振り返ろうとした瞬間、足元の踏み台がグラリと傾いた。 「きゃっ」 バランスを崩した舞の身体が、重力に引かれて傾いでいく。目を閉じ、床に叩きつけられる衝撃を覚悟した——はずだった。 「大丈夫か」 逞しい腕が、舞の腰を抱きとめた。 「え……」 見上げると、同じクラスの大和が心配そうな表情で舞を見上げていた。 「危ないな。踏み台、不安定だったろ」 「あ、ありがとう……大和くん」 舞は安堵のため息をつき、大和の腕に支えられたまま体勢を立て直そうとした。 けれど、その瞬間——大和の視線が、舞のスカートの裾に向けられていることに気づいた。 「あっ」 踏み台に乗っている舞のスカートは、下から見上げた角度で、その中が筒抜けの状態だった。そして、そこには——何もなかった。 「……」 大和の瞳がわずかに見開かれる。 舞は凍りついた。見られた。スカートの中の、何も履いていない光景を。守るものが何もない秘められた場所が、大和の目に触れてしまった。 「あ、ああ……」 言葉が喉に詰まる。顔から火が出るほど熱い。 「舞、お前……」 大和が何かを言いかけたが、舞はもう聞こえていなかった。 「見ないでっ」 震える声で叫ぶと、舞は踏み台から飛び降り、その場にしゃがみ込んだ。スカートの裾を両手で必死に押さえながら、顔を膝に埋める。 「どうしよう、どうしよう……」 心臓が破裂しそうだった。恥ずかしさと恐怖と、そして——身体の奥が熱く疼いていることへの戸惑い。見られたという事実が、背徳的な興奮として身体を駆け抜けていく。 「見られた……大和くんに、見られちゃった……」 大和は何も言わず、ただ舞を見下ろしていた。その視線が、スカートの中で熱を帯びる場所に届いているような気がして、舞はさらに顔を赤らめた。
忘れ物より大事な約束
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