翌日の午後、玲奈は住宅街にある高級マンションの前に立っていた。前日の客からの評価が予想以上に高く、店長から 「指名が入ったぞ」 と満足げに告げられたのだ。エントランスのオートロックを解き、エレベーターで七階へ。廊下の一番奥のドアをノックする。 「どうぞ……」 中から弱々しい声が聞こえた。ドアを開けると、薄暗いリビングに痩せぎすの男が座っていた。三十代後半くらいか。上品なシャツとスラックスを身につけているが、どこか怯えたような目つきをしている。 「水野玲奈です」 「あ、あの、来てくださって……ありがとうございます」 男は落ち着きなく視線を彷徨わせ、玲奈をソファに案内した。 「えっと、お酒、飲みますか?」 「いいえ、仕事ですから」 玲奈が男の隣に座ると、彼は少し身を引いた。 「あの……君は、何でもしてくれるの?」 その問いに、玲奈は首をかしげた。 「お客様が望むことなら、できる範囲で」 男はゴクリと唾を飲み込んだ。 「じゃあ、僕を……いじめてくれないか」 「え?」 玲奈は目を瞬かせた。 「いじめるって、どういうことですか?」 「言葉でいいんだ。僕をダメな人間だって罵って。足で踏んでくれてもいい」 玲奈は困惑した。今までの客とは全く違う。でも、これは仕事だ。 「わかりませんけど……やってみます」 彼女は男の前に立ち、言われた通りに彼を見下ろした。 「じゃあ、寝てください」 男が床に横たわると、玲奈はその胸に足を乗せた。 「これでいいんですか?」 「はい……もっと、強く」 玲奈は少し力を込める。男が苦悶の表情を浮かべたが、同時にその顔に快感の色が混じっているのを見て、彼女は奇妙な感覚を覚えた。 「気持ちいいんですか?」 「はい……もっと、酷いことを言ってください」 玲奈は考えた。そして、彼の目を見つめながら口を開いた。 「あなた、変態ですね。こんなことされて興奮するなんて」 「あっ……!」 男の体がビクリと震えた。 「本当は仕事もできないくせに、こんなことばかり考えてるんでしょ」 「……はい、そうです」 「惨めですね。でも、それがお好きなんでしょう?」 玲奈の言葉が続くにつれ、男の息が荒くなっていく。その反応を見ていると、胸の奥から熱いものが込み上げてくるのを感じた。彼女の足先が男の股間を掠めると、すでに硬くなっているのがわかった。 「触ってほしいんですか?」 「お願いします……」 玲奈は足でその部分をゆっくりと刺激した。男が悶えながら、熱を放出した。 「……ありがとうございました」 男が満足げに礼を言い、チップを渡してきた。玲奈はそれを受け取りながら、自分の中に芽生えた新しい感覚を噛み締めた。相手を支配する快感。今まで知らなかった自分が、少しずつ顔を出し始めていた。
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