エラベノベル堂

地下のトモダチ

全年齢

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4章 / 全10

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翌朝、遥奈が目を覚ますより早く、寝台の足元に置いた器の縁へ、やわらかな重みがかかっていた。布をめくると、ユウセイはまるで最初からそこにいたような顔で身を寄せてくる。小さかった頃の名残はもう薄い。それでも彼の甘える仕草はますますはっきりしていて、指先に触れれば、離れるなと言うように体を伸ばした。 遥奈は思わず笑いそうになり、慌てて口元を押さえた。ここで声を漏らせば、廊下の向こうにいる使用人に届くかもしれない。彼女は器を抱き上げ、寝台の影へ寄せる。朝の支度を始めるためには、この子を部屋の目立たない隅へ移すしかなかった。 その日から、遥奈は行動のひとつひとつに、これまで以上の工夫を要するようになった。窓辺に置けば外からの光で輪郭が見えすぎる。机の上では、もし誰かが戸を開けたときに隠しようがない。結局、厚手の布の内側に収め、使わない衣装箱の陰へ寄せておくのが一番安全だった。だがそこに置いておくと、ユウセイはすぐにそわそわし始める。遥奈の気配を追って、布越しに何度も体を押しつけてくるのだ。 「そんなにくっつかないで」 囁くと、彼はさらに密着した。まるで叱られていることさえ、構ってもらえている証のように受け取っているらしい。その愛らしさに胸がほどける一方で、遥奈の内側には細い針のような緊張が残った。もし家族に見られたら。もし使用人に気づかれたら。もしこの部屋に、急に誰かが入ってきたら。 昼過ぎ、扉の外で足音が止まっただけで、遥奈の肩は強張った。来客ではない、ただ通り過ぎただけだと分かっていても、息が浅くなる。ユウセイはそんな彼女の変化を敏感に感じ取ったのか、布の中から静かに顔をのぞかせ、指先を探すように伸びてきた。その仕草は慰めるようでもあり、逃がさないと言っているようでもあった。 遥奈はそっと掌で包み、深く息を吐く。秘密を守る生活は、もう単なる隠しごとではなかった。気を張り、時間を選び、声の高さまで計算する綱渡りだ。だがその綱の上で、ユウセイだけが彼女の揺れを知っている。彼の体温めいたぬくもりに触れるたび、胸の奥の怖さと安堵が同じ場所で鳴った。 夕暮れが部屋の端を薄く染めるころ、遥奈は衣装箱の陰から器を持ち上げ、誰にも見えないように胸元へ寄せた。ユウセイは満足げに身を丸め、彼女の腕の中で静かに揺れる。けれどその安らぎのすぐ裏で、戸の外からは家の気配が絶えず続いていた。隠し通せているのか、それとももう、誰かに気づかれ始めているのか。遥奈は答えのない問いを抱えたまま、そっと鍵を確かめた。

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