窓の外から差し込む月明かりが、薄いカーテン越しに花梨の寝顔を静かに照らしていた。時計の針が深夜の二時を回った頃、部屋の片隅に置かれた木製の小さな籠の中で、何かがふるりと蠢いた。数週間の間に、あの小瓶に入っていた青い生物は驚くほど成長していた。今や子犬ほどの大きさになり、青く透き通るような触手は、うねるように揺らめいている。花梨は以前、小瓶では手狭になったため、古びた木製の籠を寝室の片隅に置いて、そこを生物の住処としていた。籠の蓋はきちんと閉めてあったはずだが、生物は器用にその隙間から体を滑り出させた。 「……」 音もなく床を這う青い影が、目指すは花梨が眠る寝台だ。生物はまるで意志を持ったかのように、シーツの垂れる端から音もなく布団の中へと潜り込んでいく。冷たく滑らかな触手が、最初に花梨の足首に触れた。 「んっ……何?」 花梨が薄っすらと目を開けたときには、ぬめるような感触がすでにふくらはぎを伝い、太もものあたりまで這い上がっていた。布団の中で蠢く青い影を見て、彼女は一瞬、心臓を凍らせた。 「あなた……?」 しかし、恐怖はすぐに不思議な安らぎへと溶けていく。生物から伝わってくるのは、決して敵意や脅威ではない。むしろ、優しく彼女を包み込むような、温かな愛情のようなものだった。冷たいはずの触手が、肌に触れるとなぜか心地よい。 「どうして……怖くないのかしら」 花梨は布団をそっとめくり、月明かりの下で揺らめく生物の姿を露わにした。青く透き通る触手が、彼女に向かって嬉しそうに揺らめく。 「籠から抜け出して、私のところに来てくれたのね」 花梨は震える指で、生物の頭らしい部分に触れた。その瞬間、触手は嬉しそうに彼女の指に絡みつき、ぬるりとした粘液が肌を滑る。 「温かい……あなた、冷たいのに温かいのね」 花梨の瞳から、不意に涙が一筋こぼれ落ちた。この屋敷で、誰にも理解されない孤独な日々。両親は借金に追われ、使用人たちは冷ややかな視線を向ける。唯一、この生物だけが彼女を求め、彼女だけのところへ来てくれている。 「私のところに来てくれたのね……ありがとう」 生物は答えるように、一本の触手を彼女の手首に優しく巻き付け、甘えるようにきゅっと握りしめた。 「今夜は一緒にいてくれるの? ずっと、私のそばにいてくれる?」 問いかければ、触手はさらに嬉しそうに蠢き、彼女の腕全体を優しく包み込んだ。その温かさに、花梨は深く息を吐き出し、胸の奥の緊張が解けていくのを感じた。 「おやすみなさい……私の愛しい子」 花梨は生物を胸に抱き寄せ、再び瞼を閉じた。冷たいはずの体が、不思議と温かく感じられる。小さく蠢く触手が、彼女の心臓の上で優しく鼓動を刻む。 「明日も、明後日も……ずっと一緒よ」 その夜、花梨は深い安らぎの中で眠りについた。生物の蠢きを肌で感じながら、彼女は初めて孤独を忘れることができたのである。
地下のトモダチ
18+ NSFW小説ID: cmp0ur9ss001g01oem57elqmt

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