玄関の前で靴を履いたとき、章吾は自分の足元ばかり見ていた。いつもの感覚で立とうとすると、体の重心がわずかにずれて、思わず壁に手をつく。背が高かったころの癖のまま歩こうとすれば、膝の抜け方までぎこちなくなる。こんなふうに、ただ立っているだけでも別人になったことを思い知らされるのが腹立たしかった。 ドアを開けると、朝の空気がひやりと頬を撫でた。近所の家々からは、忙しそうな気配が漏れてくる。章吾は人目を避けるように肩をすくめ、歩幅を狭くして通学路へ出た。数歩進むたびに、髪が背中で揺れて視界の端をかすめる。鬱陶しいのに、無意識にそれを気にしてしまう自分がさらに気持ち悪い。 すれ違う大人や学生が、ほんの一瞬だけこちらを見る。その視線が長いのか短いのか、章吾にはやけに引っかかった。見られている。そう思った途端、首筋が熱くなる。知らない顔で歩くことさえ難しいのに、今の自分はどう見えているのか想像するだけで落ち着かない。視線をやりすごそうとして前を向くと、今度は歩き方まで不自然になりそうで、余計におかしくなる。 声を出して確認したいのに、独り言にすら抵抗があった。もし思ったより高く響いたら、それだけで現実を突きつけられる気がする。章吾は唇を結んだまま、通学路の曲がり角を一つずつ抜けていった。いつもの道のはずなのに、今日はまるで知らない場所みたいだ。 学校の校舎が見えてくると、胸の奥が少しざわついた。ここまで来れば、もう引き返せない。教室に入ったあと、誰にどう見られるのか。昨日までの自分として通せるのか。それとも、何か言い訳を考えるべきなのか。考えれば考えるほど、どれも薄っぺらく思えてしまう。 章吾は足を止め、校門の先を見つめた。説明するなら何を言うべきか、まずそこから決めなければならないはずなのに、答えはひとつも浮かばない。ただ、立ち尽くしていても時間だけが進む。章吾は小さく息を吐き、重たい気持ちのまま、校舎へ向かって歩き出した。
朝になったら美少女
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