奥へ進むほど、倉庫の空気はひんやりと沈んでいった。章吾は埃っぽい匂いの中で、さっき見つけた装置を見下ろす。片側の焦げた部分が、薄暗い中でも妙に生々しかった。優斗が記録をめくり、一颯と晴希が左右からのぞき込む。誰もが慎重だったのに、静かすぎるのがかえって落ち着かなかった。 「ここ、何か書いてあるぞ」 優斗の指先が紙の端をなぞる。章吾は肩越しに覗き、かすれた文字を追った。詳しい意味は分からない。ただ、さっきまでばらばらだった断片が、ひとつの不気味な輪郭を持ち始めている気がした。その瞬間だった。 晴希が装置の側面に触れ、乾いた音が鳴った。章吾は反射的に手を伸ばしたが、遅い。小さな光が装置の内部で走り、次の瞬間、胸の奥をぎゅっとつかまれたような圧が走った。 「っ、なに……」 息が浅くなる。視界の端がわずかに滲み、耳の奥で細い音が鳴り続けた。さっきまで重たかった体の感覚が、急に軽く、熱く、落ち着かないものへ変わっていく。皮膚の上を風でもない何かがかすめ、指先までぞわりとした。 「章吾、動くな!」 一颯が叫び、優斗が慌てて装置から手を離すように声を張る。晴希は青ざめた顔で後ずさり、誰もが一斉に騒ぎ出した。章吾は膝に力が入らず、近くの棚に片手をつく。倒れそうなのに、妙に意識だけは冴えていた。熱っぽいのに、寒気もする。自分の中で何かが揺さぶられているのが分かる。 「やばい、止められるかこれ」 「もう触るなって言っただろ!」 怒鳴ったはずの声が、自分でも驚くほど裏返りそうになる。章吾は唇を噛んだ。こんなふうに体が勝手に反応するのは、知らない場所に放り出されたみたいで怖い。けれど、その怖さの底に、妙に鋭い実感があった。確かに今、自分は変わっている。元に戻る方法を探すべきなのか、それともこのままの自分を受け入れるべきなのか。答えは出ないのに、迷いだけがはっきり形を持ち始める。 装置はまだ小さく震えていて、記録の紙がぱさりと床へ落ちた。章吾はそれを見つめたまま、荒くなった息を整えようとした。友人たちの声が遠くで重なり、誰もが必死に騒いでいる。その中心で、章吾だけが次の一歩を決められずにいた。
朝になったら美少女
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