エラベノベル堂

青い迷宮の落とし穴

全年齢

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4章 / 全10

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落下の衝撃は、思ったよりも鈍く終わった。背中を打ったはずなのに、厚い布越しに土を敷いた台へ放り出されたようで、息だけが浅く弾む。柚乃は目をしばたたき、帽子がずれていないかを確かめるより先に上体を起こした。 「……生きてる」 声に出してみると、地下の空気がひどく近い。湿った石の匂いと、ひんやりした静けさが、耳の奥まで染みてくる。周囲は思いのほか広く、落ちてきた穴の輪郭だけが上の暗がりに口を開けていた。壁は古い石で組まれ、ところどころに白くかすれた紋様が刻まれている。柚乃は立ち上がり、杖を握り直した。 まずは明かりを、と口の中で呟いて火の術を組み上げる。だが、淡い熱が生まれかけた瞬間、光はふっと散った。掌の中で集まったはずの魔力が、煙のように薄れて消える。 「え、なんで」 もう一度。今度は風を試す。けれど、見えない流れが立つ前に、術式そのものがほどけていく。柚乃は眉をひそめ、壁に刻まれた紋様へ視線を向けた。さっきまで気づかなかったが、模様はただの飾りではない。淡く鈍い光を帯び、彼女の術を吸い取るように沈黙していた。 「魔力を……吸ってる?」 理解した途端、背筋に小さな冷えが走る。ここは落とし穴ではなく、閉じ込めるための部屋だったのかもしれない。そう考えた次の瞬間、静まり返っていた床の片隅が、ぽとりと揺れた。 丸くて青いものが、石の上へ現れる。水滴の塊をそのまま結んだような姿だった。輪郭はやわらかく、しかし確かな意志を持って、柚乃のほうへじわりと寄ってくる。 柚乃は一歩下がった。杖を構えても、頼れるはずの火も風も形にならない。封じられた空気が、今までの探索とはまるで違う重さで彼女を包んでいく。さっきまでの高揚は、跡形もなく冷えた。静かな部屋の気配が、たったひとつの青い影で不穏に変わり始めていた。

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