エラベノベル堂

青い迷宮の落とし穴

全年齢

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7章 / 全10

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柚乃は床の継ぎ目をなぞるように視線を走らせた。青いスライムは相変わらず、目の前で小さく弾みながら揺れている。けれど今度は、その動きに怯えるより先に、壁面の古い彫り込みが目についた。暗い石に埋もれるように刻まれたレリーフは、ただの飾りにしては妙に規則正しく、光を受けたときだけ浮かび上がる線がある。 「これ……魔力じゃなくて、光?」 呟いた瞬間、柚乃の胸の奥で点と点がつながった。紋様は力を吸っているのではなく、何かを映しているのだ。天井のわずかな反射、壁の角度、床に落ちる影。そのどれかが揃った時にだけ仕掛けが働く。そう考えると、今までの違和感にも筋が通る。 彼女はゆっくり立ち上がり、杖先を床へ向けた。だが魔法を試すのではない。杖に映る微かな輝きを、レリーフへ返すように角度を探る。青いスライムがその動きに合わせて近づくと、石壁の一部が淡く返光した。 「やっぱり」 柚乃は息を止めた。反射が強まった場所だけ、壁の線が一瞬だけ鮮明になる。封印の核は目に見えない力ではなく、光の連なりで支えられているらしい。なら、必要なのは一気に壊すことじゃない。ずらして、揺らして、少しずつ外すことだ。 彼女は青いスライムの位置を見極め、わざと半歩だけ横へ退いた。するとスライムは追いかけるように弾み、そのたびに床へ落ちる青い影が角度を変える。柚乃はその変化を逃さず、杖で壁の一角に光を集めた。眩しいほどではない、けれど確かに届く細い反射。それがレリーフの溝を走った瞬間、鈍い手応えが返ってきた。 部屋の奥で、かすかに何かがほどける音がした。硬く閉じていた空気が、ほんの少しだけ軽くなる。 「弱まった……」 声は震えていたが、確信があった。封印はまだ残っている。完全にはほどけない。それでも、さっきまで閉ざされていた壁の一部に、見えない綻びが生まれている。柚乃は荒くなりかけた呼吸を整え、もう一度レリーフへ視線を向けた。青いスライムは変わらず揺れている。けれど今は、ただの厄介な障害ではなく、仕掛けを動かすための小さな鍵に見えていた。

7章 / 全10

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