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湯上がり勘違い夜話

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5章 / 全10

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「いや、待てって。俺、そこまで変な寝相じゃないはずだろ」 亮が布団の端をぎゅっとつかんだまま小声で言うと、隣から翔太のため息が返ってきた。 「自分で言うな。さっきから十分変だ」 「だから、それは寝ぼけてただけで」 「寝ぼけて人の恋人みたいに寄りかかるやつがあるか」 「あるかって言われても、暗いんだよ。顔なんて見えねえし」 「見えなくても普通はわかるだろ」 その返しに、亮は言葉を詰まらせた。わかるはずだった。けれど、布団のぬくもりと酔いの残り香に引っ張られて、頭は勝手に都合のいいほうへ転がったのだ。 「……結衣の声がした気がしたんだよ」 「それ、ただの願望だろ」 「うるさいな」 反論した亮は、すぐに自分でも情けなくなった。翔太がくすっと笑う気配がする。腹立たしいのに、怒りきれない。その半端さがいちばん恥ずかしい。 そのとき、反対側の布団がもぞりと動いた。 「……ん、なに、今の」 かすれた声は結衣だった。続けて、奈緒の寝起き声も重なる。 「なんか、やけに近くない?」 亮と翔太は同時に硬直した。 「起きてるのかよ」 亮が呻くと、奈緒がまだ半分眠ったまま、ぼんやりと答える。 「起きたっていうか、音で目が覚めた……亮、なにしてたの」 「してない、してないから」 「してない距離じゃなかったよね」 結衣まで、目をこすりながら布団の上で顔を上げる。 「え、ちょっと待って。亮、こっちじゃないの?」 「いや、俺はこっち……っていうか、どっちだよ」 自分で言っていて混乱する。部屋の中はまだ薄暗いが、誰がどこにいるのかを考えるだけで、頭の中の地図がぐちゃぐちゃになった。 「一回、並び直そう」 翔太が珍しくまともな声で言った。 「いや、でも、動いたら余計に……」 「このままのほうが余計だろ」 奈緒の一言に、誰も反論できない。 結衣が布団の縁を手探りでつかみ、奈緒のほうへ少しずつ身を寄せる。亮は慌てて自分の位置を探り、翔太も逃げるみたいに肩を引いた。だが、狭い部屋の中ではその動きさえ妙に大げさで、四人とも布団の端でぶつかりかける。 「ちょ、待て待て、足」 「そっちが先だって」 「誰か一回、黙って」 「無理」 寝起きの声が重なって、ひそひそ話はなぜか小競り合いに変わった。けれど、さっきまでの気まずさよりは、ずっとましだった。少なくとも、誰が誰の隣にいるのかを言葉にしながら、少しずつ位置を入れ替えていくほうが、暗闇で誤魔化すよりはましだ。 「これで合ってる?」 結衣が自信なさげに言う。 「たぶん」 亮が答えると、翔太がすぐに突っ込んだ。 「たぶんって何だよ」 「お前だってたぶんで動いてたろ」 「俺はお前ほど寝ぼけてない」 「そこは否定できねえ……」 くすくすという笑いが、眠気の奥からこぼれた。四人はまだ布団の端で半分起きたまま、誰がどこへ戻るべきかを小声で確かめ合っている。珍妙な再配置は、なかなか終わりそうになかった。

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