エラベノベル堂

湯上がり勘違い夜話

18+ NSFW

小説ID: cmpam51ef006q01rttcr8ww2p

2章 / 全10

畳の感触が消え、ふんわりとした柔らかさに包まれていることに気づいた。千秋は薄く目を開けたが、真っ暗な闇が視界を覆っている。電気は消え、窗帘の隙間から頼りない月光が床に落ちているだけだった。身体を動かそうとして、四肢が鉛のように重いことに気づく。まだアルコールが回っているらしい。記憶が曖昧だ。卓を囲んで笑い合っていたこと、颯人が心配そうに顔を覗き込んでいたこと、そこから布団に移動したことだけが断片的に蘇る。 「ん……」 隣から小さな寝息が聞こえた。目を凝らすと、闇に慣れた視界にふくらみが見える。柚心だ。その向こうには結斗が寝ているはず。千秋は自分の左側にも気配を感じた。颯人だ。同じ部屋で川の字になって眠っている。静かだった。旅館の廊下を歩く足音も、遠くで聞こえる話し声も消えている。深夜なのだとぼんやり理解した。千秋はまぶたを閉じ、再び眠りの底へ沈もうとした。その時である。布団の端が小さく動いた。誰かが起きたのだろうか。颯人か、それとも柚心か。気にしようと思ったが、思考がまとまらない。するりと、何かが布団の中へ入り込んできた。冷たい空気が一瞬入り込み、それから熱が近づいてくる。千秋は息を止めた。誰かが背後に潜り込んできたのだ。身体が強張る。心臓が早鐘を打ち始めた。颯人だろうか。トイレに起きて、戻る場所を間違えたのだろうか。それとも、何か別の意図があるのか。背中越しに伝わる体温。荒い息遣いが耳元で聞こえる。千秋は動けなかった。恐怖と、もう一つの得体の知れない感情が胸の内で混ざり合う。相手は何も言わない。ただじっと、千秋の反応を待っているようだった。

2章 / 全10

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