エラベノベル堂

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3章 / 全10

翌朝の空気は、昨夜の余韻を少しだけ冷ましていた。正明は近所のカフェの窓際席で、湯気の立つカップを片手にノートパソコンを開く。外の通りを行き交う人の足音が、ガラス越しに遠く聞こえた。 「さて、感想は……っと」 画面を開くと、利用者から届いた短い書き込みがいくつか並んでいた。読んでくれた人が、どこで迷ったのか、どの作品にたどり着きやすかったのか。正明はひとつずつ目を通し、眉を少し上げる。 「作品紹介は分かりやすい、か。……でも、分類はまだ探しにくいってあるな」 指先が止まる。トップページの案内を整えたつもりでも、入口が見えやすくなっただけで、棚の分け方までは詰め切れていなかったのだ。似た雰囲気の作品が並ぶ場所で、読み手は一度立ち止まってしまう。正明はその様子を思い浮かべ、静かに息を吐いた。 「なるほどな。見つけてもらうだけじゃ足りない。見つけたあと、迷わず進めるようにしないと」 カップを置き、彼は分類名を書いた欄を見直す。少し曖昧だった表現を削り、読む前から内容の手触りが伝わる言葉へ置き換える。似た項目が重ならないように並べ替えると、画面の印象が不思議なくらい軽くなった。 「これなら、最初の一歩が分かりやすい」 誰かの声に耳を傾けるたび、直すべき場所が見えてくる。しかも、それは欠点を責めるためじゃなく、より読みやすくするためのヒントだった。正明は感想欄を閉じずに、何度も見返す。たとえ小さな指摘でも、積み重なればサイトの輪郭を変えていく。 画面の中の erabenovel.com は、まだ完成とは言えない。けれど、前より確かに手触りがある。整えて、応えて、また少し整える。その繰り返しが、ただの思いつきだった場所を、続いていく場所へ変えていく。 「急がなくていい。長くやるなら、なおさらだ」 正明はそう言って、ゆっくり笑った。焦りで押し切るより、地道に直したほうが、きっと遠くまで届く。カフェの窓の外では朝の光が少し強くなり、彼の中にも、ここから先を続けていく覚悟が静かに根を下ろしていった。

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