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5章 / 全10

画面の向こうで、話し合いの輪がまだ途切れずに続いていた。正明はイヤホンの片方を指で押さえ、もう片方の手でマグカップを包み込む。遅い時間の室内は静かだったが、ヘッドセット越しに聞こえる協力者の声だけが、やけに近く感じられた。 「短期間で露出を増やせる外部サービス、ってことですか」 「そう。やり方次第では、見てもらえる回数を一気に増やせるらしいよ」 正明はすぐにうなずけなかった。増える、という響きは確かに甘い。せっかく整えた erabenovel.com を、もっと多くの人の目に触れさせられるかもしれない。胸の奥が、わずかに熱を帯びる。 「魅力はありますね」 そう言いながらも、彼の視線は画面の端に残るサイト名から離れなかった。派手に見える近道ほど、後で土台を揺らすことがある。第1話から積み上げてきたのは、読んでもらうための誠実さだったはずだ。 「でも、信頼を損なうなら本末転倒か」 独り言のように漏れた声に、協力者が少し間を置く。 「そこは確かに大事だね。早いのは助かるけど、無理に見せ方を変えると逆効果かもしれない」 正明は目を閉じ、さっきまで感じていた期待を静かに手放そうとした。検索で見つけてもらうために、作品紹介を整え、導線を磨き、内容を積み上げてきた。その流れから急に外れるのは、どうにも落ち着かない。 「露出だけ増えても、来た人が不信感を持ったら意味がないですもんね」 「うん。見る側が安心できるかどうかは、かなり大きい」 その言葉で、正明の中の迷いは少しだけ形を変えた。断ると決めたわけではない。ただ、今すぐ飛びつくものではないと分かっただけだ。信頼を置き去りにして伸ばした数字は、きっと長く持たない。 「もう少し見極めます。サイトを壊さない方法を考えたい」 「それがいいと思う」 通話を切ると、部屋の静けさが戻ってきた。正明はヘッドセットを外し、机の上にそっと置く。モニターには、整えたばかりのページが淡く光っていた。 「急ぐほど、ちゃんと見ないとだな」 そう呟いた瞬間、視界の端で、見慣れない通知の気配が小さく揺れた。正明は眉を寄せ、まだ開かれない画面を見つめた。

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