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神様の告白

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6章 / 全10

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「……っ」 花が小さく肩を震わせた。次の瞬間、口元からふっと力が抜ける。さっきまであった、少し古風で意地の悪い気配が、夜風にほどけるように消えていった。 章太は思わず身を乗り出す。 「花?」 「……章太」 返ってきた声は、ひどくか細かった。けれど今度こそ花本人の声だと分かって、章太は息を詰めた。 花は自分の両手を見下ろし、それから耳まで真っ赤になって顔を覆った。 「うわ、うわ、うわ……」 「落ち着け」 「無理だって! 今の、聞いてた!?」 「聞いてた」 「最悪……」 花は膝の上で縮こまり、指の隙間から章太を見た。その目が潤んでいるように見えて、章太の胸がどくりと鳴る。 「最悪じゃないだろ」 「最悪だよ。あんな、あんなこと……」 言いかけて、花はまた顔を伏せる。耳まで赤い。祭りの灯りに照らされても、もう隠せる色じゃなかった。 沈黙が落ちる。遠くの屋台の笑い声も、太鼓も、ここまでは届かない。残っているのは、花の荒い呼吸と、章太の妙に落ち着いた心臓だけだった。 章太は一度だけ目を閉じ、それからゆっくり言った。 「冗談なら、俺は流せる」 花がぴくりと顔を上げる。 「でも、あれは冗談じゃなかったろ」 「……」 「花が言ったことも、さっきまでの顔も。全部、そういうことだろ」 花の喉が小さく鳴った。否定は返ってこない。 章太は少しだけ間を置いて、逃げ道を塞ぐみたいに続ける。 「俺、さすがに、聞かなかったことにはできない」 「……っ」 花の頬がさらに赤くなる。恥ずかしさで泣きそうなのに、目だけは逸らせないでいる。 章太はその目を見返した。 「お前が、本当に俺のことをそう思ってるなら」 声が少しだけ低くなる。 「ちゃんと、聞かせてほしい」 花は息を呑んだ。何か言おうとして、唇が震える。けれど言葉は出ない。 章太は責めるつもりなんてなかった。ただ、さっきの言葉が空気に溶けるままなのが、どうしても嫌だった。 「無理に今じゃなくていい」 「……でも」 「でも?」 花は両手で顔を隠したまま、絞り出すみたいに言った。 「章太が、平気な顔してるから……余計に、ずるい」 「平気じゃない」 即答すると、花がびくっとする。 章太は苦笑した。 「俺だって、今かなり必死だ」 花の指の隙間がわずかに開く。 「……ほんと?」 「ほんと」 そう言ってから、章太は自分でも驚くほど真っ直ぐに続けた。 「花が言ったこと、たぶん全部聞こえた。だから、俺も逃げない」 花の瞳が揺れる。頬の熱はまだ引かないのに、さっきより少しだけ表情がやわらいだ。 「……じゃあ、どうするの」 小さな声だった。 章太は一瞬だけ空を見上げる。提灯の光が木々の隙間で滲み、遠くの祭りの喧騒はもう薄い。 そして視線を戻す。 「どうするかは、花が決めていい」 「ずるい」 「ずるくない」 「ずるいよ。そういうの、章太っぽい」 花はようやく少し笑った。泣きそうな顔のまま、困ったみたいに笑う。 章太もつられて息を吐く。気まずさは消えていない。けれど、もう沈黙に押しつぶされる感じではなかった。 「帰る前に、少しだけ歩くか」 花は返事をしなかった。ただ、真っ赤な顔のまま、こくりと小さくうなずいた。

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