エラベノベル堂

涙が溶ける場所

18+ NSFW

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4章 / 全10

エリナは自分の手を見つめたまま、動けずにいた。アランの戦場での痛みが、まだ体の奥に残っているような感覚。彼女は恐る恐る一歩後退した。離れれば、この奇妙な共有から解放されるはずだった。だが、一步距離を置いた瞬間、胸の奥に冷たい穴が空いたような不安が襲ってきた。 「っ、何これ……」 エリナは自分の胸を押さえる。心臓が早鐘を打ち、理由のない恐怖が全身を駆け巡る。アランもまた、壁から背を離し、苦悶の表情を浮かべていた。 「離れると……駄目だ」 彼が苦しげに呟く。 「何かが欠けていく感覚になる」 エリナは眉をひそめ、嫌悪感と戸惑いを滲ませた。 「まさか、接触しないと不安になるなんて」 「試してみろ」 アランが手を伸ばしてくる。エリナは一瞬躊躇したが、彼の言う通りだと本能的に理解していた。彼女は恐る恐る彼の手を取った。指が触れ合った瞬間、冷たい不安が霧散し、代わりに温かな安心感が胸を満たした。 「本当ね……」 エリナは複雑な表情で彼を見る。 「私達、この呪いでお互いを必要とする体にされたみたい」 アランは深く息を吐き、不本意そうに顔を背けた。 「最悪の冗談だ」 だが、二人の手は離されなかった。離すことができなかった。エリナはしぶしぶ彼の側へ体を寄せる。肩が触れ合い、体温が伝わってくる。 「明日になったら、あの古老を問い詰めないと」 彼女が低く言う。 「ああ。だが今は……」 アランは言葉を切り、諦めたように彼女の隣に座り込んだ。赤い炎と白い霧が、二人を包み込むように穏やかに揺らめいている。敵対心は薄れ、代わりに奇妙な連帯感が芽生えていた。同じ苦しみを知る者同士としての、言葉にできない絆。 「不思議ね」 エリナがぽつりと漏らす。 「あんたが敵だと思っていたのに、今はそう思えない」 アランは彼女を見つめ、静かに答えた。 「俺もだ。お前の中にある孤独は、俺のそれと同じ種類だ」 二人は互いを見つめ合い、言葉を交わさずとも理解し合っていた。この夜が始まりに過ぎないことを。

4章 / 全10

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