エラベノベル堂

ライバルは今夜、隣に座る

18+ NSFW

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5章 / 全10

沈黙が二人を包んでいた。健太の手はまだ遥香の肩に触れたままで、赤い光がゆらゆらと揺らめき続けている。 「……手を離して」 と遥香が小さな声で言った。だが、その声音に拒絶の響きはなかった。健太はゆっくりと手を引っ込める。赤い光は薄れず、むしろ彼女の胸のあたりで深く輝きを増していた。 「仕事に、戻らないと」 遥香が言う。健太は頷き、デスクへ戻った。だが、椅子に座った瞬間、視線が手元のスケッチブックに釘付けになった。完成間近のデザイン画。明日のショーで発表するはずだった衣装のスケッチ。健太は改めてそれを見つめ、息を呑んだ。描かれているシルエット。肩のライン、腰の曲線、すらりと伸びた脚。それは——遥香の身体を完璧に捉えていた。無意識のうちに、彼女をイメージして描いていたのだ。 「……どうしたの」 遥香の声に、健太は顔を上げた。彼女もまた、手元の衣装を見つめ、固まっていた。 「健太、これ……」 遥香が縫製した衣装。布地を丁寧に裁断し、組み立てられた仕上がり。そのフォルムは、健太の身体に合わせているかのように見えた。肩幅、胸板の厚み、腕の長さ。 「君も……気づいたのか」 健太が問うと、遥香は赤い光を全身に纏ったまま、小さく頷いた。 「私が作ったこの衣装、あなたの身体寸法に合わせてる気がする。最初から、あなたをイメージしてたみたいに」 「僕のスケッチもだ。君のラインを描いてる」 二人は顔を見合わせた。青い光は遥香の周りから消え、灰色の孤独も影を潜めていた。残っているのは、情熱的な赤だけ。 「無意識だったのね、お互い」 遥香の声が震えていた。 「ライバルだと思ってた。あなたを倒して、私が選ばれるんだって、ずっとそう思ってた」 彼女の胸の赤い光が、ふいに爆発的に明るさを増した。健太の心臓が早鐘を打つ。彼女の鼓動と自分の鼓動が、また重なり合っている気がした。 「遥香……」 「でも、違った」 彼女はスケッチと衣装を交互に見つめ、唇を噛んだ。 「私、あなたのことばかり考えてた。デザインしてる時も、布を選ぶ時も、いつの間にかあなたを想ってた」 動揺と興奮が、二人の間で渦巻いていた。

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