動揺と興奮が二人の間で渦巻いていた。健太は椅子から立ち上がり、遥香に近づいた。彼女の全身を包む赤い光が、脈打つように明滅している。 「遥香、僕は……」 言葉が続かない。ライバルとして競い合ってきた相手。昇格をかけた勝負の最中。こんな感情を抱くべきではない。背徳感が胸の奥で警鐘を鳴らしていた。だが、それ以上に強い衝動が健太を突き動かす。 「わかってる」 遥香が囁いた。彼女の瞳が潤んでいた。 「これはいけないことよ。明日のショーがある。昇格のチャンスがある。私たちはライバルで……」 「ライバル?」 健太が問い返すと、遥香は小さく首を振った。 「違う。ライバルなんかじゃなかった。ずっと、あなたを見てたの」 赤い光が爆発的に輝きを増した。健太は手を伸ばし、彼女の頬に触れた。瞬間、熱い感覚が指先から流れ込んでくる。彼女の体温、彼女の鼓動、そして彼女の内側で燃え盛る情熱。それらが全て、自分の中に押し寄せてきた。 「健太……」 遥香が彼の手に自分の手を重ねる。健太の目には、彼女の感情を表す色彩だけでなく、自分自身の感情の色も見え始めていた。同じ赤。同じ情熱。二人の赤い光が混ざり合い、オフィスの中を埋め尽くしていく。 「我慢できない」 健太が呟き、彼女の顎を持ち上げた。遥香は抵抗しなかった。彼女の瞳が、期待と焦燥と、深い愛情を映している。唇が重なった瞬間、世界が反転したような感覚に襲われた。柔らかい感触。温かい湿り気。それらは健太自身の唇でも感じているはずなのに、同時に遥香が感じている感覚も流れ込んでくる。自分が唇を塞がれている感覚。自分がキスをされている感覚。与える喜びと、与えられる喜びが、同時に胸を満たしていく。 「んっ……」 遥香の喉から甘い声が漏れる。その声が健太の耳に届くと同時に、彼女が発している快楽の波も伝わってきた。唇を通して、相手の体内に満ちる熱情が直接流れ込んでくる。熱い。芯から溶かされるような熱さだ。健太は唇を離さず、さらに深く彼女を求めた。舌先が彼女の唇をなぞり、中へと滑り込む。遥香の舌が応えるように絡みついてきた。唾液が混ざり合い、互いの味が口腔いっぱいに広がる。背徳感が警鐘を鳴らし続けている。だが、その警鐘さえも、溢れ出す感情の中にかき消されていた。色が溢れ出していた。赤だけではない。二人の間で新たな色が生まれ、混ざり合い、極彩色の光となって二人を包み込んでいた。
ライバルは今夜、隣に座る
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