エラベノベル堂

共感覚クリニック

18+ NSFW

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6章 / 全10

ネオンの光が滲む街角で、陽菜はふらつく足取りで歩いていた。陸上部の打ち上げ飲み会。いつもなら控える酒も、怪我のストレスと治療の通院で溜まったものが爆発し、気づけばグラスを重ねていた。 「陽菜、大丈夫?」 美咲に肩を貸されながら、 「平気、平気」 と手を振る。口ではそう言いながら、視界がぐらぐらと揺れている。 「一人で帰れる?」 「うん、バス停近いし」 結局、強がって一人で歩き出したのは良いが、バス停が見つからない。いや、そもそもどの方角だったか。頭の中が霧がかったようで、思考がまとまらない。街灯の明かりがいくつも重なって見えた。 「あれ……?」 人影が一つ、向こうから歩いてくる。シルエットに見覚えがある。いや、感覚でわかる。胸の奥がざわついて、熱くなる。この感覚は、あの人だ。 「先生……?」 陽菜は呼び止めた。黒髪に細いフレームの眼鏡。無愛想な表情。宗介だった。彼は足を止め、眉をわずかにひそめた。 「陽菜さん? こんな時間に、どうしてここに」 「飲み会……帰ろうと思ったら、バス停が」 「……酔ってますね」 「そんなことないです」 陽菜は反論しようとして、一歩踏み出した瞬間、バランスを崩した。受け止めようとした宗介の肩にしがみつく。 「っと……大丈夫ですか」 至近距離で彼の顔を見上げる。消毒液の匂いが微かに混じる。いつもの彼の匂いだ。そして、接触した瞬間、感覚のリンクが一気に強まった。アルコールで鈍っていた感性が、彼の感覚を受け入れる回路を全開にしてしまう。彼の体温。脈動。そして、抑え込んでいた熱。 「あ……」 陽菜は息を飲んだ。自分の体の熱さと、宗介の体の熱さが混ざり合う。彼の心臓の鼓動が、自分の胸の中で響いているようだ。ドクン、ドクンと、速くなるリズム。 「先生の鼓動、すごい……早い」 「……離れてください」 宗介の声は低く、抑圧されている。でも、彼の腕は陽菜を支えたまま離れなかった。 「できません。離れたら、倒れちゃう」 陽菜は彼の胸に顔を埋めた。コート越しに伝わる温かさ。感覚のリンクを通じて、彼の内側が手に取るようにわかる。理性と欲望の狭間で揺れる心。触れたい、でもいけない。そんな葛藤が、彼の熱となって流れ込んでくる。 「陽菜さん……これは、まずいです」 「なんでですか。先生も、私と同じこと考えてるんでしょう?」 彼女は顔を上げ、彼の瞳を覗き込んだ。夜の闇の中で、眼鏡の奥の瞳が揺れている。表情の仮面が、今にも崩れそうだった。 「先生の気持ち、全部伝わってきます。私を……欲しいって思ってる、んでしょう?」 宗介は答えなかった。ただ、支えていた腕の力が強まった。二人の体温が夜気の中で溶け合い、境界線が曖昧になっていく。陽菜の頬は熱く、体の奥が疼き始めていた。

6章 / 全10

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