エラベノベル堂

シェアドリーム

全年齢

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5章 / 全10

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まどかは、またあの場所に立っていた。 広くて、輪郭だけがやわらかく滲む、あの夢の空間。足元は揺れているのに、前よりずっと怖くない。むしろ、胸の奥が静かに温まっていく。 「来たんだ」 少し離れたところから声がして、顔を上げる。健人がいた。前夜よりも自然に、そこにいるのが当たり前みたいな顔で。 「うん。そっちも」 「当たり前だろ、って言いたいけど、正直ちょっと安心した」 「私も」 まどかが笑うと、健人もつられたように口元をゆるめた。前は手を伸ばすまで少しだけ間があったのに、今夜は気づけば並ぶ距離まで近い。二人とも、最初からそうしていたみたいに自然だった。 「夢の中なのに、会えない日があると変な感じするね」 まどかが言うと、健人は少しだけ目を細めた。 「わかる。現実では一回も話してないのに、ここだと不思議なくらい落ち着く」 「現実、か……」 その言葉に、ほんの少しだけ空気が揺れた。まどかは視線を落とす。壁一枚の向こうで同じ夜を過ごしている相手が、こんな近くにいるのに、手を伸ばせば届くのに、起きたらまた遠い。 「起きたあとも、ちょっとだけ続いてくれたらいいのに」 まどかがぽつりと言うと、健人は驚いたように瞬きをした。 「それ、俺も思った」 「ほんと?」 「ほんと。朝になった瞬間、いきなり消えるのが悔しいっていうか」 「悔しい、か」 まどかは小さく笑った。そんな言い方が健人らしくて、胸の奥がくすぐったい。 二人はしばらく、ただ並んで揺れる景色を見ていた。床のようなものも、遠くの光も、相変わらず曖昧だ。それでも、この場所で交わす言葉だけは妙に確かで、夢だということを忘れそうになる。 「ねえ」 まどかが呼ぶと、健人がこちらを向く。 「さっきから思ってたんだけどさ」 「うん」 「あなた、もしかして」 その先は、うまく続かなかった。代わりに、健人の表情が少し固まる。 「隣の部屋、じゃないかって?」 まどかは息を呑んだ。まったく同じ疑いが、同じタイミングで胸に浮かんでいたのだ。 「……うん」 「俺も、今ちょうどそう思った」 二人は同時に黙った。さっきまで近かった距離が、急に別の意味を持ちはじめる。けれど恐れより先に、確かめたい気持ちが勝っていた。 「もしそうだったら」 健人が言いかけて、そこで言葉を切る。 まどかもまた、次の言葉を見つけられない。 視界の端で、光がゆっくり滲みはじめていた。夢の終わりが近い。 「また、会えるよな」 健人の声は少しだけ低く、まっすぐだった。 まどかは、消えかける景色の中でうなずく。 「きっと」 そう答えた瞬間、ふっと意識が引かれるような感覚が走った。隣人かもしれないという疑いだけを残して、二人の輪郭はやわらかくほどけていく。名前を呼ぶ前に、光がすべてを包み込んだ。

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