エラベノベル堂

シェアドリーム

18+ NSFW

小説ID: cmps5di54005501pq3zzcvdj7

6章 / 全10

窓を叩く雨音が激しさを増していた。夕方になり、空は重い灰色に染まっている。まどかは講義を終えてアパートへの道を急いだ。傘を差していたけれど、横から降り注ぐ雨は容赦なく服を濡らしていく。靴の中まで水が入って、歩くたびに不快な音がした。 「もう、最悪」 思わず口から不満が漏れる。ひまわり荘のエントランスに辿り着いたとき、まどかの髪は濡れて肩に張り付き、カーディガンは重くなっていた。 「早く着替えなきゃ」 ポストを一瞥して、階段へと向かう。古い木造階段は湿気を含んで軋む。二階の廊下に着くと、いつものように自室のドアが見えてきた。けれど、その前に隣室が目に入る。今日はあちらから生活音が聞こえてこない。出かけているのだろうか。まどかはバッグから鍵を取り出した。手が濡れていて、鍵を落としそうになる。 「……よし」 鍵を鍵穴に差し込む。古い錠前は少し硬くて、力を込めなければならない。カチャリ。鍵が回る音がして、まどかはホッとした。ドアを押し開ける。いつもの部屋の匂いがするはずだった。けれど、足を踏み入れた瞬間、まどかは違和感を覚えた。 「あれ?」 部屋の間取りは同じはずだ。入口からキッチンが見えて、奥に居室があるワンルーム。けれど、何かが違う。窓のカーテンの色。自分の部屋はベージュだったはず。けれど、目の前にあるのはグレーのカーテンだ。 「あれ、部屋おかしい」 混乱した思考が頭をよぎる。それに、部屋の配置が逆になっている気がする。キッチンが左側にあるはずが、右側にある。 「どうなってるの」 まどかは濡れた体のまま、立ち尽くした。バッグから落ちた滴が、床に小さな染みを作っていく。部屋の中は静かだ。雨音だけが窓の外から聞こえてくる。そして、ふと気がついた。部屋の奥、居室の向こう側。閉め切られた襖のような仕切りが見える。自分の部屋にそんなものはなかったはずだ。 「ここ、どこ」 まどかの心臓が早鐘を打ち始めた。鍵を開けて入ってきたはずなのに、自分の部屋ではない。けれど、鍵は確かに回った。古いアパートの鍵など、どれも似たり寄ったりなのだろうか。まどかは震える指でバッグを握りしめた。 「間違えた……?」 その言葉を口にした瞬間、背筋に冷たいものが走った。無断で他人の部屋に入ってしまった。それも、隣室だ。慌てて引き返そうとしたとき、奥の居室から微かな音が聞こえた気がした。誰かいるのだろうか。まどかは足を止めた。恐怖と好奇心が入り混じる。逃げ出すべきだ。けれど、足が動かない。濡れた服が肌に張り付いて、冷たさが骨まで染みていくようだった。

6章 / 全10

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