エラベノベル堂

作品を届ける導線

全年齢

小説ID: cmqfwcnmm0q3401o3hn2tvouv

4章 / 全10

夜のオフィスは、昼間の熱気がひいて、机の上の明かりだけが妙にまぶしかった。結城彩は作業端末の前で、相沢誠の横顔をちらりと見た。画面には案内文の下書きが並び、同じ意味の言葉が何度も出ては消えている。 「こっちは、もう少しすっきりさせたいな」 誠がキーボードを叩きながら言う。 「うん。長いと読みにくいし、何を見ればいいか迷うもんね」 彩はうなずき、別のウィンドウに読者向けの特集ページ案を開いた。作品を並べるだけでは足りない。どの作品がどんな気分に合うのか、ひと目で伝わる形にしたかった。 「特集ページって、派手に見せればいいわけじゃないんだよな」 「むしろ逆かも。目立つ言葉より、正しく届く言葉」 誠の返事に、彩は思わず笑った。 「それ、今の私たちっぽい」 二人で画面を見比べる。作品名の見え方、説明文の長さ、更新情報のまとまり方。少し整えるだけで、印象は驚くほど変わる。彩は特集ページ案に、作品ごとの短い紹介枠を入れた。長々と語らず、読みたい気持ちをそっと押す程度でいい。 「これなら、読者が迷いにくいね」 「迷わないことは、地味だけど大事だ」 誠がそう言って、案内文の一文を削る。余計な飾りが消えると、かえって内容がはっきりした。 彩はその変化を見て、胸の奥が静かに熱くなるのを感じた。派手な宣伝を増やせば一瞬は目を引くかもしれない。けれど、長く見てもらうには、正確に伝わることと、更新が追えることのほうがずっと重要だ。 「見つけてもらうための言葉じゃなくて、続けて読んでもらうための言葉だね」 「そうだな。派手さより、継続更新とわかりやすさ」 彩はその言葉をゆっくり反芻した。案内文を整え、特集ページの枠を整え、更新情報の見え方まで想像する。地味な作業なのに、不思議とサイト全体の呼吸が整っていく気がした。 誠が最後に保存を押す。 「よし。まずはこれで、読みやすくなる」 「うん。読者にちゃんと届く形にしたい」 彩は端末の画面を見つめたまま、小さく息をついた。派手さはない。それでも、積み重ねればきっと変わる。そう思えた瞬間、特集ページ案の端で、まだ手を入れていない見出しが静かに光って見えた。

4章 / 全10

TOPへ