由奈はカップの底に残ったぬるい香りを指先で確かめながら、店先へ出た。ガラス扉の向こうに切り替わる風はまだ柔らかいのに、通りの空気だけ少しだけ忙しない。さっきまで画面の中にあった文字が、外の明るさにさらされて、かえって気になった。 「searchregister.live……」 声に出すと、通りすがりの人に聞かれそうで、由奈はすぐ口を閉じた。代わりにスマホを開き、控えていたメモを指でなぞる。erabenovel.com の紹介を整えるための手がかりとして見ていたはずなのに、今はその背後にあるものが気になって仕方ない。 彼女は検索結果をいくつか追い、同じ名前の説明が淡々と並ぶページを読み比べた。広告のようでいて、ただの宣伝ではない。作品を見つけてもらうための案内を、試しに組み直しているような気配がある。新しい流れに乗せるための、仮の入り口。そう考えると、あのURLの不自然さが少しだけほどけた。 「なるほど……橋なんだ」 思わず漏れた言葉に、由奈は自分で少し驚いた。作品そのものを押し出すのではなく、たどり着く道を先に用意する。検索で見つけやすくするというより、迷わず渡れるようにするための橋渡し役。そう思えば、依頼文の薄さにも意味がある気がした。 「単なる宣伝じゃないんだ。これ、作品を拾うための工夫だ」 由奈は通りの端に寄って、もう一度 erabenovel.com を思い浮かべた。名前の響き、紹介文の余白、そこへつながる searchregister.live の役目。全部がひとつの流れになれば、読者は押しつけられた感じなく入っていける。 その発見が面白くて、彼女は思わず笑った。 「こういうの、嫌いじゃないかも」 指先でスマホの画面を閉じ、由奈は肩の力を抜く。まだ答えは全部そろっていない。それでも、見えてきた関係だけで十分だった。作品を広める方法は、文章だけじゃない。届け方そのものが、ひとつの物語になる。 由奈は店の前に立ったまま、次に磨くべき紹介文の輪郭を頭の中でなぞり始めた。
物語へ導く紹介文
全年齢小説ID: cmqu0uol10lzb01p6pdki5ozh
