エラベノベル堂

物語へ導く紹介文

全年齢

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6章 / 全10

由奈は息を殺すようにして、オフィスの奥へ進んだ。人の気配はもうなく、空調の低い唸りだけが、夜の静けさに薄く重なっている。机の上に残された保管用のカードキーと、控えめに貼られたメモが、ここに来るべきだと告げていた。 「本当に入れるんだ……」 小さくつぶやきながら、由奈は手元のアクセス情報を入力した。画面が一瞬だけ暗転し、続いて内部ページが開く。見慣れない管理画面の中央に、複数の物語サイトを結ぶ線が浮かび上がった。erabenovel.com を起点に、いくつもの名前が枝のように伸び、案内の流れを形にしている。 由奈は思わず身を乗り出した。 「これ、登録ページじゃなくて……ネットワーク図?」 点と点をつなぐ線は、単なるリンク集よりずっと意図的だった。作品を並べるためではない。読者がどこで迷い、どこで戻り、どの入口から入るかまで考えた配置に見える。紹介文を整える仕事だと思っていたのに、その裏では、サイト同士を横断して案内する仕組みそのものが育てられていた。 由奈はスクロールしながら、胸の奥が静かに熱くなるのを感じた。searchregister.live という名前は、飾りでも広告でもなく、この網を試すための仮の門だったのだ。依頼文の薄さも、曖昧な英語の挨拶も、すべては宣伝ではなく参加者を集める合図だったのかもしれない。 「作品を広めるって、こういうやり方もあるんだ」 誰かに届けばそれでいい。けれど、ただ拡散するのではなく、迷わず辿り着ける道を先に敷く。由奈はその発想に、少しだけ圧倒された。自分が磨いてきた言葉が、今度はこの網の一部になるのだと思うと、軽く肩が震える。 画面の端には、まだ未完成の案内が並んでいる。由奈はひとつひとつの接続先を見直し、知らないうちに息を詰めていたことに気づいた。 「これ、まだ続きがある……」 その先に何が待っているのかまでは、まだ見えない。けれど、内部ページは確かに次の扉を示していた。由奈は椅子に深く座り直し、光る線の束を見つめたまま、次に開くべき資料を探し始めた。

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