エラベノベル堂

検索に届く物語

全年齢

小説ID: cmrcga7ol000o01pczhzm01f3

7章 / 全10

共有端末の前は、ひとりでいるときより少しだけ落ち着かなかった。陽介は画面の明るさを抑え、入力欄のカーソルが点滅するのを見つめる。さっきまで整えていた案内文は、たしかに誠実になった。けれど、そこに置くものが静止したままでは、やがて誰の目にも留まらなくなる。 「……一回直しただけじゃ、足りないか」 ぽつりとこぼすと、自分の声が妙に薄く聞こえた。検索で見つけてもらうには、登録して終わりじゃだめだ。見つけてもらったあとも、動き続けていると伝えなければならない。陽介はその当たり前を、ようやく重みとして理解した。 彼は新しく用意していた短編のファイルを開く。長編の合間に置くには短い、けれど余白のある作品だった。登場人物の小さな揺れをすくい上げた話で、ページを閉じる前にもう一度見返したくなるはずだと、書いている途中から感じていた。 「これなら、立ち止まる理由になるかな」 独り言に、答える人はいない。それでも陽介は、読み手がどこで足を止めるかを想像しながら、冒頭の数行を確認した。強く押し出す一文ではない。けれど、次を読みたくなる細い糸はある。 短編を追加し、表示の順番を少し入れ替える。新しい作品が先に目に入るようにして、既存の案内文へ自然につながる形を作る。どこから入っても、今ここで動いているサイトだと伝わるように。 「更新がある場所なら、また来てもいいって思うかもしれない」 そう呟くと、胸の奥に小さな手応えが灯った。ひとつの登録先に頼るのではなく、訪問者が次のページへ進みたくなる導線を置く。そのために必要なのは、派手な仕掛けじゃない。新しい短編と、そこへ続く静かな案内だった。 保存ボタンに指を伸ばした陽介は、ふと画面の下に並ぶ文字列を見た。短編の題名、案内文、更新日時。どれもささやかな情報なのに、つなげるとサイトの呼吸みたいに見える。 「……これで、足を止める人は増えるかな」 問いはまだ空中に残ったままだった。だが次の瞬間、保存完了の表示が淡く浮かび上がり、陽介は小さく息をのむ。追加された短編が、ページの流れを変えた気がした。

7章 / 全10

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