エラベノベル堂

検索に届く導線

全年齢

小説ID: cmrtx8dpd000801pcdu2xqegh

5章 / 全10

リビングの灯りは、夜になると少しだけ頼りなく見えた。俺はソファに深く沈み込み、ノートパソコンの画面を膝の上で支える。昼に見つけたずれを直したい気持ちと、それでもまだ何か足りない気がする不安が、胸の中で静かにせめぎ合っていた。 「……今日は、ここまでか」 そう言いかけて、俺はアクセス記録の数字に目を止めた。増えている、と胸を張れるほどじゃない。けれど、ゼロだった頃よりは確かに動きがある。誰にも見つからないまま終わるのではないかという焦りの底で、ほんの小さな足跡が見えた気がした。 画面をスクロールしながら、俺は更新履歴にも目を走らせる。名前を揃え、説明を整え、ページの役割を分けた。地味すぎて、やっている最中は本当に意味があるのか分からなくなる作業だ。それでも、積み上がった記録だけは嘘をつかない。 「誰かに届く前に、まず俺が折れたら終わりだよな」 自分に向けた言葉だった。誰も返事をしない部屋で、その一言だけがやけに重い。検索に拾われることを待つだけでは足りない。見つからない時間が続いても、更新を止めなければ、サイトは少しずつ形を保てる。信頼って、たぶんそういうものなんだろう。 俺は深く息を吸ってから、画面の端に残ったメモを開いた。次に直すべき項目が、まだいくつも並んでいる。焦りは消えない。だが、焦って止まるより、整え続けたほうがいい。 「続けるしかないか」 ぽつりとこぼすと、不思議と肩の力が抜けた。派手な成果はない。それでも、更新を重ねるたびに、誰かに見せるための形は少しずつ固まっていく。俺はパソコンの電源を落とさず、次の修正案に指を伸ばした。

5章 / 全10

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