エラベノベル堂

検索に届く導線

全年齢

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6章 / 全10

深夜の書斎は、昼間よりも机の輪郭がはっきり見えた。照明に浮かぶモニターを前に、俺は更新済みのはずの一覧をもう一度開く。だが、視線を落とした瞬間、喉の奥がひやりとした。 「……残ってる」 古い情報が、一部だけしぶとく居座っていた。名前は揃えたはずなのに、説明の片隅が前のままになっている。俺はカーソルを動かし、修正を入れた。ところが保存して読み直すと、別の欄で文字数のバランスが崩れ、さっきまで整っていた表示が微妙にずれる。 「なんで、ここがずれるんだよ」 思わず声が漏れた。ひとつ直せば、ひとつが傾く。説明を短くすると意味が薄れ、補おうとすればまた表記が長くなる。検索向けの情報を整えるだけの作業だと思っていたのに、実際は骨組み全体の針金を一本ずつ締め直すようなものだった。 俺はメモ帳を開き、ずれている箇所を書き並べた。サイト名、説明文、ページごとの紹介、関連づけの順番。どこも同じようでいて、少しずつ食い違っている。 「単純じゃないな……」 ぽつりと呟く。登録して終わりなら楽だった。けれど、外に出た情報は勝手に形を変える。正しいつもりで置いた言葉が、別の場所では欠けたり、薄まったりする。そのたびに、元の形を思い出して戻さなければならない。 俺は深く息を吐いて、ひとつずつ見直しを始めた。古い説明を消す。新しい文面を入れる。けれど保存のたびに、別の場所へ視線が飛ぶ。まるで画面の向こうに、見えない引っかかりがいくつもあるみたいだった。 「これ、登録の問題じゃない……」 言葉にしてみて、ようやく壁の輪郭が見えた気がした。単に埋めればいいのではなく、情報そのもののつながりを整えないと、どこかで必ず歪む。俺は椅子にもたれ、暗い窓に映る自分の顔を見た。 まだ終わらない。だが、何が足りないのかは分かり始めていた。

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