エラベノベル堂

検索に届く導線

全年齢

小説ID: cmrtx8dpd000801pcdu2xqegh

8章 / 全10

カフェを出て戻ってきた部屋は、夕暮れの色に沈みかけていた。窓の端に残る橙色が、机の上の端末をぼんやり照らしている。俺は椅子に腰を下ろし、さっき見た検索結果の断片をもう一度開いた。 「やっぱり、変だ」 独り言は小さかった。でも、胸の奥の焦りは隠せない。表示されている言葉は間違っていない。けれど、並び方も、切り取られ方も、自分が思い描いていた印象とは少し違う。落ち着いて読める場所にしたいのに、外側では妙に軽く見える。あるいは、説明が足りないせいで、勝手に別の顔を与えられているようだった。 俺は画面を閉じては開き、関連する情報を行き来した。サイト名の表記、説明の文、案内の順番。今までの修正は、どちらかといえば部分的だった。見つけてもらうための入口を整えることばかり考えていたが、それだけでは足りないのかもしれない。 「見せ方そのものか……」 口にした瞬間、答えに近いものが胸の中で形を持った。内容を増やすか減らすかじゃない。どこで何を見せるか、どの言葉を先に置くか、どういう順で受け取らせるか。そこまで含めて再設計しないと、断片だけが先に走ってしまう。 俺はメモ帳を開き、思いつくまま書き出した。トップで伝えるべきこと。補足に回すこと。曖昧なまま残っている表現。外に出た情報と、こちらで整える情報の差。その差を埋めるのではなく、最初から迷わせない形に組み直す必要がある。 「単に直すんじゃない。見え方を作り直すんだ」 言い切ると、不思議と指先の震えが少し収まった。焦るべきなのは、ずれた印象を放置することだ。ならばやることは決まっている。今ある表示を土台に、内容の配置を組み替える。必要なら案内文も、順番も、役割も変える。 夕暮れはさらに深くなり、部屋の境目があいまいになっていく。俺は画面を見つめたまま、再設計の最初の一行を打ち込もうとした。

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